･ ページ2
「女性と話すくらいなんでもないだろ」
「なんでもない？は〜さすがイケメンは違うわ〜。男子高出身で、バレンタインにもらったチョコレートは母親と妹からのみ、話しかけられても緊張しすぎてまともに会話が成立しないせいでついたあだ名はゲイのA、職場でもおばちゃんとしか話せない俺がどうして女性陣とお話できる！？」
「何を言っているのか全然理解出来ないし、俺には荷が重い」
「なんでそんな冷たいの？俺がここまで曝け出してるのってスマイルに対してだけじゃん？こんな話他にできないんだよねえお願いほんとにお願い」
「はぁ、お前が勝手に曝け出したんだよな」
「だって一番付き合い長いじゃん！初めてペア組んだ相手がお前じゃん！心許しちゃうじゃん！」
とうとう目を潤ませ始めたこの男、何度も言うが信じられないことにこれでも周りには冷静沈着で通っている。
こいつが言うように、ペアを組んだのが運の尽きだったのかもしれない。
Aは女子学生の前ではほとんど口もきかず、男子学生とすらも距離を置いた。というのも集団でいると女子学生ついてくるからだそうだが、とにかくAは女性との接触を拒んだ。
ありとあらゆる場面で徹底的に避けた。グループワークの際は常に俺を隣に置き、女性が一人でも居ようものならば頑なに身を固くし口を噤んでしまう。その帽子の下を覗きこむと目が泳いで青ざめて、俺の服の裾をぐ、と掴んでくるほどなのだからおぞましいという他ない。
説明責任を放棄した男の代わりに俺が他の生徒に話をつけるようになった。たったそれだけで、Aは俺に心を開いてしまった。
「実は、女性恐怖症なんだ･･････」
それは難儀だな。と適当に相槌を打つ俺を信頼してくれたのはAの自由だが、こんな突飛なことを頼まれるくらいならば、程々に距離をあけておくべきだったかもしれない。「頼む」もう一度、Aがそう口にした。
厄介事を押し付けられるのは本来では避けたいことだ。しかし、唯一の理解者だとAが俺に対して思っている時点で、これは避けようがない事態だったのかもしれない。俺の前で、再びAが頭を下げる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 77人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やなぎ | 作成日時：2024年1月21日 12時
