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「…ここ、」
「今は息子さんが継いでるんだって」
そう呟きながら商店に慣れた様子で入って行った宮舘くん。
車に戻ってきて私にアイスの半分をくれると
「お見舞いの時によく通ったんだ」と明かした。
「Aさんの好きなものってこれしか知らなかったから」
「…持ってきてくれてたんだ、」
「半分こにしても食べてくれる訳じゃないし丸々一本俺が美味しく頂いたけどね」
ハンドルを握りながらふふ、と笑う彼が新鮮だった。
喧嘩をしていた彼とはちがう柔らかい雰囲気に
私も笑みがこぼれた。
私が溺れたという川。
いつも一緒にアイスを齧っていた高架下の河原を通ろうとしていた時に「ここで食べない？」と口をついていた。
どうしてもと言うと彼はやっぱり応じてくれた。
車椅子を引いて行ってもらうと
危なくないところで高校の時のように一緒に並んで
アイスを齧った。
高校の時のようにと言っても心はまだあの頃のまま、
高校生のままだ。
これからどうすれば…と漠然と思った。
「……あの日のこと覚えてる？」
「…溺れた時のことは…あんまり、」
「全部俺のせいなんだ。…こうなったのは」
「喧嘩を目撃したAさんは止めようとしてくれたんだよ。そしたら突き飛ばされて、ふらついて、そのまま川に落ちた。
…俺は何人もの奴らに足止めされてて、全員殴り倒すまで助けに行けなかったんだ」
「本当にごめん。謝っても謝り切れない」。
流れる川を見つめながら静かに呟いた宮舘くんは
そっと私の方を見た。
こんな風に彼にじっと見つめられる日が来るとは
あの頃の私は思わなかっただろう。
「宮舘くんのせいじゃないよ」
「…」
「だからこんなに私に色々してくれたんだね。
…全然、自分を責めなくてよかったのに」
「…」
「…私こそ大事な時間を奪ってごめんね」
そう呟いた途端に
私の左手が彼の大きな右手に包まれた。
「違うんだ」と彼は言葉を落とした。
.
「Aさんが好きなんだ。……俺」
ぎゅっと繋がれた手がすごく温かかった。
ああ、そっか。
私が彼を放っておけなかった理由も、きっと…
ううん。
絶対同じだってそう思った。
「君が俺にしてくれたようにずっと側にいたい」。
そう言うと、彼は私の頬を伝う涙をそっと拭って微笑んだ。
End
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Haruno(プロフ) - mamemiyaさん» mamemiya様、お返事が遅くなり大変申し訳ありません😭💜さんのお話気に入って頂けて本当に嬉しいです！！そうなんです、少しのすれ違いがとんでもない後悔を生んでしまうこともあるかと思います…。こちらこそ素敵なコメントを有難うございました！ (2023年4月22日 15時) (
レス) id: 7ace42d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
mamemiya(プロフ) - 深澤さんの話が切なすぎて胸がぎゅーっと痛くなりました。好きって思ったらちゃんと伝えないといけないですね。切ないですが、素敵な話をありがとうございました。 (2023年4月16日 12時) (レス) @page18 id: 8b0826854e (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - あいさん» あい様最後まで見て下さりありがとうございます…！黄色さんでしたか！ご意見頂けて嬉しいです（ ; ; ）今回めちゃくちゃ更新早かったです笑 でも本当に無理はしていないんです！いつも書ける時に書いてるんですよ！その温かなお気持ちが嬉しいし感謝です！（ ; ; ） (2021年10月3日 16時) (レス) id: c65c76f5bd (このIDを非表示/違反報告)
あい - 頑張り過ぎなHarunoさんへ今日は怒らせてください(笑)敬語遣わずごめんなさい！たまにこうなったら許してください。今日もラブです！ (2021年10月3日 14時) (レス) id: 60ef7f07e2 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 完結お疲れ様でした。 私の中での今回の一位はやはり黄さんです。優しく看病してくれるのが浮かんでもう(涙)素敵な人柄でしたよ！ 今回も更新早いですね。きっと日々青い鳥も更新してくれてるはずなのに、読者に供給し過ぎです！ゆっくりしてっていつも心配になるぞ！ (2021年10月3日 14時) (レス) id: 60ef7f07e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Haruno
| 作成日時：2021年9月20日 15時
