嘘つきな君へ 10 ページ20
「ねぇサンドゥル…」
SD「…ん?」
ある日、またぬいぐるみを持って病室を訪ねた僕に
窓の外に降る雪を眺めたまま話しかけて来たAちゃん
「…今まで…ありがとう…」
SD「え?」
「今までずっと、ありがとう」
SD「……」
いつもとは違うトーンの声に動揺してしまう僕
SD「な、なにそれ、なんでそんな…
これが最後みたいな言い方…」
「だって…最後かもしれないでしょ?」
そんなAちゃんの言葉に僕はギュッと拳を握りしめた。
分かってる…会いに来る度に弱っていくAちゃんの姿を見てれば、
もう先は長くないのかもしれないって事くらい分かってる…
…でも…だからってそんなの……
SD「そんな事言うなよ…」
そう言った後、言葉が続かなかった…
それ以上なにも言えなかったのは、何か言ったら泣いてしまいそうだったから…
「……」
SD「……」
僕が黙り込んでしまい少しの沈黙が続いた後、
いつものトーンで話し始めたAちゃん
「サンドゥル、いい事教えてあげる!!」
SD「…いい事?」
「人間の脳みそって、生きていく為に
都合良く出来てるんだって」
SD「??」
突然そんな話しを始めたAちゃんだけど、
何を言いたいのか僕には良く分からなくて、ただ静かに耳をかたむけた
「どんなに辛くて悲しい記憶があっても
時間が経てばいつかは
忘れるようになってるんだって」
SD「……」
「逆にどんなに大切な思い出でも
時が経てば忘れちゃう生き物だって、
前にテレビで偉い人が言ってたよ」
“「人間ってバカだよねぇ」”なんて言いながら笑うAちゃん
「…だからさ…だからサンドゥルも、
私の事なんてすぐ忘れられるよ」
SD「……」
こんな時…僕は何を言えばいいんだろう…
気の利いた言葉ひとつ浮かんでこない自分が情けない
SD「…僕は…僕は忘れないよ……」
「…忘れてよ…」
そうつぶやいた君の声はちゃんと僕に届いていた。
だけど…聞こえてないフリをした…
…君の事…忘れたくなんてないから…
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作者名：のん | 作成日時：2017年4月14日 12時
