嘘つきな君へ 9 ページ19
「来なくてもいいのに」
いつも僕が病室に会いに行く度に言われる言葉
「仕事忙しいんでしょ?
無理して来てくれなくてもいいよ」
少し機嫌悪そうに、そしてどこか悲しそうにそう言うAちゃんに
「そんなに忙しくないよ」僕は笑ってそう答えた。
もちろん仕事は忙しい、コンサートが終わったとはいえ
カムバックも控えてるし個人の仕事だってあるし…
本当は寝る時間も惜しいと思うくらい忙しい毎日を送ってるけど…だけど…ダメなんだ…
少しでも時間が出来たらAちゃんに会いに来ないと不安になる、
今会わないともう次は無いかもしれない…
なんて考えたら怖くなって、居ても経ってもいられなくなるんだ
SD「今日は膝の検査もあって
そのついでに寄っただけだしさ」
なんていう僕の嘘も「ふーん」って言うAちゃんの反応を見ると
たぶんバレてるのかもしれないけど
SD「はい、これっ!!今日はアヒルちゃん!!」
まだ不機嫌そうな顔をしてるAちゃんにそう言って僕は小さなぬいぐるみを手渡した。
いつも病室に1人でいるAちゃんに少しでも笑顔で居てほしくて、
1人じゃないよ、寂しくないよ、って言いたくて
僕は病室に来るたびに小さなぬいぐるみをプレゼントしてる。
喜んだ顔を見たいって言うのが正直な所だけど、Aちゃんの反応はいたって冷ややかで
「もー…そんなので喜ぶ歳じゃないって
いつも言ってるじゃん」
なんていつも唇をとがらせて文句を言われてしまうんだ。
でも口ではそんな事を言いながら僕があげたぬいぐるみをベッドの枕元にならべてくれてるし
全てのぬいぐるみに名前をつけてくれてる事だって僕は知ってる
「お前はサンドゥルに似てるから
名前は“ドゥル”だっ」
今日あげたぬいぐるみに小さな声でそう言いながらギュっと抱きしめるAちゃん
「ねぇサンドゥル、
サンドゥルって本当にセンスないよね」
SD「へ?」
「だってこのぬいぐるみ
ちょーブサイクだもん!!!」
SD「そんな事ないよっ!!かわいいじゃん!!」
「ブサイクだよ！サンドゥルそっくり」
SD「どういう意味だよっ!!」
「フフフッ」
何を言われても、何をされてもいい…
君が笑ってくれるなら、それだけでいいんだ…
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作者名：のん | 作成日時：2017年4月14日 12時
