五つの難題【ゲゲゲの鬼太郎】 (ページ2)

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#序章. ページ2

空は明るい色から暗い色になり、月は昇っていなかった。Aはそんな事に興味は示さなかったのか、火鼠の皮衣を洗っていた。内側の心は「この皮、本当に熱いわね」と呑気に思っていたが、冷たい水でぱちゃぱちゃと洗う音をバックに、その洗う手は止めなかった。

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皮を洗い終えて数十分。Aは家から出た。戸をしっかりと閉めたのは忘れていない。妖怪横丁の明るい夏祭りのような雰囲気は夜になっても変わらなかったので、何処か安心して息を吐き、胸を撫で下ろすと「こんな時間に何をやっているんだ」、と低い声が耳元で聞こえた。嗚呼、鬼太郎か、と思い、横をちらり、と見ると、学童服を着ている少年が其処には立っており、妖の雰囲気を纏わせていた。Aはそんな鬼太郎を見ると、ふふ、と笑い、全てを慈しむ様な笑みを浮かべた。

「…輝夜姫は月に帰る時間じゃなかったか？」
「月に帰れるならすぐにでも帰ってたわよ？」

Aが真意の解らない笑顔を見せながらそう言うと、鬼太郎は何処か悲しそうな表情を見せると、「そうか」と零した。輝夜姫、いや、Aが月に帰るのはいつだろうか、と鬼太郎は思っていた。一方、Aは「帰ったら、この幽霊族の泣き顔が見れるのかしら」と思っていた。この二人の思いが同じになるのは、いつだろうか。

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