◇・*。放課後のシンデレラ。*・◇ (ページ35)

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言われるがまま

椅子に座ると、センパイと向かい合わせの格好になる

紫耀「このボタンさ、何回つけてもとれんの」

ぐにゃぐにゃにくくりつけられた赤色のボタンをくるくる回してから

針と糸をわたしに渡した

紫耀「おねがい、たすけて(笑)」

この前は気がつかなかったけど

こうやって正面からちゃんと見ると

センパイはがっしりした身体つきをしていて

やっぱり3年生だし

大人のオトコのひと、って感じがする

木漏れ日が差し込んで

センパイの顔がうまくみえない

「やってみます…」

馴染みのない教室で

慣れないセンパイと2人きりなことに、

…緊張でどきどきする

心臓の音が聞こえちゃわないか心配するけど

でも、じょうずに話すこともできなくて

とりあえず、ボタンを縫うことに専念した

紫耀「おぉ～」

センパイのハスキーな声だけが

誰もいない教室にしずかに溶けこむ

紫耀「うまいね」

頬杖をついたまましゃべるセンパイのピアスが

ゆらゆら揺れて

せっけんとバニラが混じったみたいな香りが

ふわふわ、わたしたちを包んだ

「...あの、」

紫耀「ん？」

「…そんなにじっと見られると緊張します・・・」

本当は怖いひとじゃないのかもしれないけど

緊張して

手先がかすかにふるえる

紫耀「なんで(笑)」

センパイはわたしのキモチなんかおかまいなしみたいに

クスって笑ったあと

紫耀「・・・だって心配だもん」

「…え、」

紫耀「俺の提出物」

そう言ってから

腕を広げて机に寝そべるようにして

うつむいてボタンを縫うわたしを

上目づかいで見つめてから

いたずらするみたいにウィンクした

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