◇・*。放課後のシンデレラ。*・◇ (ページ17)

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「あ、えっと…サッカー部の救急箱をとりに…」

放課後の保健室って

なんて静かなんだろう

　

まるで、別世界にいるみたい

紫耀「ふぅん…、たぶん先生そろそろ戻ってくると思うけど」

そう言った先輩はすとん、と保健室の先生が座る椅子の上に座って

背にもたれかかって天井を見ながらくるくると回りはじめた

　

『吉田先生に聞けばすぐもらえると思うよ』ってレナさん言ってたけど、

救急箱、どこに置いてあるんだろう…

キョロキョロ保健室を見渡してみる

　

きゅる、きゅる、と先輩が椅子の上で回る音と、

窓の外でサラサラと揺れる葉っぱの音だけが時々聞こえてくる

一応探してみると、

消毒液とか包帯が収納されているキャビネットの上に

【部活用】ってマジックで書かれてある段ボールが置いてあるのを見つけた

背伸びをして箱をとろうとするけど届かない

　

と思ったら、

　

ふわっと

　

せっけんのような、それでいてバニラのような甘い香りがして

　

先輩が、背伸びもせずに箱をとってくれたことに気づく

　

紫耀「危ないでしょ」

　

「あ、ありがとうございます…っ」

緊張で変なふうに声が裏返ったのが恥ずかしくて

目を合わせられない

緊張しながら段ボール箱を開くと【男子サッカー部】と書かれた救急箱が入っていた

「あ・・・あった」

救急箱を開けると

絆創膏、消毒液、包帯、などが入っている

紫耀「サッカー部？」

「はい」

紫耀「じゃあそれで大丈夫だ」

はい、と頷きながら急いで段ボールを閉じようとするけど、

すっかり古びてボロボロになってる段ボールは硬くて閉めづらい

先輩が急にしゃがんで

ふいに、

手がぶつかる

「あ、」

紫耀「やるよ」

はじめて同じ目線になった先輩の両耳で、

夕暮れに照らされたピアスがきらりと光った

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