十七話.支度 ページ19
十月ももう終わろうとしている。
しかし、私にとっては大切な始まりである。
辰眞さんと広島に行って、数日。
今日、祝儀を挙げることになった。
私は広げた茶色の風呂敷に、荷物を包む作業を始めた。
あと三十分もしたらバスで、二河公園へ向かう。
二河公園近く。詳しい場所は分からないから、公園まで向こう家に迎えに来てもらうのだ。
『夢がないねえ…』
なんて呟いていると、突然。
背中をポンと叩かれた。
「なんじゃ。嫁入り先が近いんは夢がないんか？え？」
『…、お兄ちゃん』
振り向くと、ニヤニヤと笑う兄がいる。
兄はしゃがむと、私の頭を撫でた。
周作「実家が近いんに越したことは無いじゃろう。」
周作「わしもよう遊びに行ける思うが。」
兄はそう言って私の肩に手を置き、
私を優しく抱き寄せた。
『わっ…』
周作「可愛い妹がどがいな嫁になっとるか、嫁入り先が呉ならすぐ見に行けるしのう」
『や…やめてや、お兄ちゃん！』
私は慌てて兄から離れる。
兄はそれを見て愉快そうに笑った。
周作「はは、遊びに行くいうんは冗談じゃ。向こう
『もう…そんとに心配性で…ほうじゃ。お兄ちゃんの嫁さん候補は見つかったんかね』
周作「…なあに、広島に一人心当たりが居るけえ…さーて、わしも支度せんとのう。」
兄はそう言うと立ち上がり、居間の方へ行こうとした。
兄があからさまにその話題を避けようとしているような気がして、私は兄の背中を呼び止める。
『…お兄ちゃん。本当にええの』
周作「…なにが」
『お兄ちゃん、本当は遊』
径子「はい直しといたよ、あんたのもんぺ。」
『きゃっ』
突然私の頭に、姉は遮る様に何かを乗せた。
私はそれを手に取り眺める。
それは私がいつも着ているもんぺだった。
新しい訳でもない。
『はあ…どこを直してくれたん？』
私が聞くと、姉は大きくため息をついた。
気づけば、兄はいなかった。
径子「モンペに�猖黙�A�畚颪い箸辰討犬磴院�直した。…もう北條じゃあ無かろう。」
『あ、ほうじゃ。』
径子「冴えん。はよう支度し。
その格好で祝儀に出るつもりかね！」
『んぐっ』
さらに姉は、近くに用意されていた祝儀用の晴着を私の顔に押し付ける。
闇市で母と姉が選び買ってきてくれた物だ。
紫色の淡くて綺麗な着物である。
径子「はよう着替え！あんたが着替えりゃもう行くよ！」
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なー(プロフ) - 初めて読ませていただきました。心温まるお話、続きが気になります！ (12月14日 16時) (
レス) @page27 id: 5a5cf333fe (このIDを非表示/違反報告)
さとみ - はじめまして。楽しみに読ませてもらってます。完結したお話しでも再開するのでしょうか？またお話し読めるのを楽しみにしてます。 (2022年9月30日 14時) (レス) id: 1dc70ba9d0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ(プロフ) - 最近すごく『この世界の片隅に』にハマっていたんですよ、、ストーリーもキャラクター同士の関係も最高です…更新楽しみにしていますね (2020年7月12日 23時) (レス) id: bc0dbb2048 (このIDを非表示/違反報告)
もえこ(プロフ) - お話が動き始めて本当に嬉しいです！ありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2020年3月26日 17時) (レス) id: 8b605c37d7 (このIDを非表示/違反報告)
Reika(プロフ) - おかえりなさい^ ^作者さんのペースで更新頑張ってください！読みに行きますね。 (2020年3月15日 23時) (レス) id: 616ea4ec17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏 | 作成日時：2018年7月22日 11時
