十二話.廣島縣 産業奬勵館 ページ14
辰眞「Aさん。ありゃ※
『ほうなん…ありゃ綺麗ですね…』
辰眞「はい…しかし、もう日暮れですね」
辰眞さんは前から吹いてくる静かな風を、目を瞑って感じていた。
私も彼に習って風に身を委ねる。
姉に結んでもらった髪は小さく靡いた。
『うちは夕焼け、好きですよ。
辰眞さんは？』
私は辰眞さんの方を向いてそう言う。
すると辰眞さんは私の方を向く代わりに、つないだ私の右手を自らの口に引き寄せる。
そして優しく私の右手に口付けた。
辰眞「はい…好きです。」
その瞬間は、えらいゆっくりに感じた。
右手からキャラメルみたいに甘く溶けそうな感覚になった。心臓が熱い。顔も火照る。
こんなの初めて。
しかし辰眞さんも同じのようで。
顔を赤くして口付けた私の右手を握りながらじーと見つめていた。
『あ、あのう…』
辰眞「…」
『ほ、ほうじゃ。辰眞さん。広島に来て、うちとやりたいことって何ですか？ここに来るだけじゃないでしょ？』
辰眞「…」
辰眞さんの顔は夕日に照らされてか、はたまた照れているからか。
どんどん赤みを帯びていく。
私の言葉すら耳に入っていないらしい。
『あーの！！』
私は辰眞さんの耳元で大声で呼びかける。
すると辰眞さんの肩はビクッと震えた。
辰眞「ぉ…おお、ほうじゃ。あの、Aさん！ふ、船にのりましょう！」
『え？』
辰眞「Aさん。この川を元安川いうてです。元安川では、貸ボートがあるけえ、
漕いでみませんか」
『貸…ボート？』
辰眞「はい。貸しボート屋があって、元安橋から相生橋の間を小舟でいけると聞いとります」
『元安橋？』
辰眞「この橋です。さあ、こちらへ」
私の呼びかけに気づいたかと思ったら、急に船に乗ろう、と。
全く、破天荒な人である。
しかし断る理由なんてない。
私は彼に手を引かれ、
ボートに乗ることになった。
──────────────────
※
今の原爆ドームです。
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なー(プロフ) - 初めて読ませていただきました。心温まるお話、続きが気になります！ (12月14日 16時) (
レス) @page27 id: 5a5cf333fe (このIDを非表示/違反報告)
さとみ - はじめまして。楽しみに読ませてもらってます。完結したお話しでも再開するのでしょうか？またお話し読めるのを楽しみにしてます。 (2022年9月30日 14時) (レス) id: 1dc70ba9d0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ(プロフ) - 最近すごく『この世界の片隅に』にハマっていたんですよ、、ストーリーもキャラクター同士の関係も最高です…更新楽しみにしていますね (2020年7月12日 23時) (レス) id: bc0dbb2048 (このIDを非表示/違反報告)
もえこ(プロフ) - お話が動き始めて本当に嬉しいです！ありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2020年3月26日 17時) (レス) id: 8b605c37d7 (このIDを非表示/違反報告)
Reika(プロフ) - おかえりなさい^ ^作者さんのペースで更新頑張ってください！読みに行きますね。 (2020年3月15日 23時) (レス) id: 616ea4ec17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏 | 作成日時：2018年7月22日 11時
