【るろうに剣心】no name (ページ5)

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「(不思議な娘だな…。)」

走り去ったAの背中を見送って緋村はまだ温もりが残る手を鞘に携えた。
理想の為の振るう刀になる、いつしか自分が師に言った言葉だった。

「(…いつか、あのような娘も)」

そこまで考えて緋村は頭を振って踵を返した。

「あれは････」

その姿を見ていた者がいたとは知らずに――･･

「斎藤さーん！」

「何だ、騒々しい。」

刀の手入れをしている斎藤のところに雪崩れ込むようにAが入った。

「今日な、今日な！めっちゃ綺麗な赤髪のお兄ちゃんに送ってもろてん！ええやろ！逢引きみたいで･･！」

「お前･･、ほかの奴らには言うなよ。局中法度を知った口でよく紗洒落るな…。」
「ふふふ･･、たぶんね。私より5歳くらい上の子やで。‥訛りがなくて、身のこなしがな」

「A。」

「「山崎くん」」

夢中になって話していると突然襖があいて監察方の山崎が部屋に入って来た。

「･････あの小僧を見張っていろ。」

「あの小僧って、今日逢った緋村さん？」

小さく頷く山崎に斎藤は眉間に皺を寄せて鋭い眼光で両者を一見した。

「･････山崎君、Aにはまだ早い。」

そう擁護する斎藤にAは黙したまま山崎を見上げた。きっと仲良くなってしまえば辛いものを知るからだろう、が･･

「分かった。」

「････A。」

「けど、」

運べる情報はたかが知れてるし、それに私にとっては新選組も攘夷派も大して差はない。居心地が良いか悪いか、仲が良いか悪いか、世の為になるかならぬか

「私はまだ子供やし･･な？」

それだけの基準にそって互いの有益になる情報しか渡せない。どちらも、原作を知る私にとっては重要なのだから。

「へぇ…、お前にそんなこと言う童がいたなんてなぁ‥。面白いじゃねぇか‥！」

「晋作…。お前なぁ･･;;」

茶屋の一室で晋作と呼ばれた青年が声を上げて笑った。

「だが確かに･･、達観したものの言いようだな。そんな娘があの新選組にいるとは‥」

「本当だぜ、あいつらには勿体ねぇんじゃねぇか？」

ベベンと三味線が音を奏でる。茶をすする音、緋村は壁にもたれながら話す2人を横目に見た。

「…男だったら欲しいくらいだな。」

「晋作、かの巴の御前も女だったんだ。いずれそんな考えは世から消えるかもしれんぞ。」

「だったら･･！」

ベンと甲高く三味線が音をたてた。