【るろうに剣心】no name (ページ13)

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「A！」

「総司くん！大丈夫？」

ひょこっと障子から顔を出せば総司くんが少しだけ顔を綻ばせた。子供の力って偉大だ。

「お疲れ様。はい、粗茶。」

「粗茶って･･、ここは労わって玉露くらいが良かったなぁ～。」

クスクスと笑いながら出されたお茶をゆっくりと飲む総司くんにホッと息を吐く。ちなみに出したのは焙じ茶だ。

「うちにそんなお金はありません。」

「そうだねぇ～･･。今回の捕り物で報奨金、どれくらい出るかなぁ？」
「そうやねぇ～･･。お駄賃上がらへんかなぁ～。」

「ええ？Aのお駄賃？」

関係なくない？と意地悪を言う総司くんをお盆で叩いた。失礼な！日ごろの子供らしからぬ諜報活動をもっと褒めてほしいものである。

「ごめんごめん！にしても･･、本当にAちゃんって子供？同い年の女の子と話してるみたいだね。」

「それは総司くん。総司くんの精神年齢がただ単に低「何言ってるのかな？」ちょっ、鞘から手ぇ離し。」

さわやかな笑顔で刀に触れる総司くんの手を叩いた。本当に10歳も差があるのか、アンタ。

「･･････ッ本当に…、同い年だったらいいのに…。」

少し眉を下げて笑う総司くんに居たたまれなくなる。胸がぎゅっと苦しくなる。けど

「総司くんと同い年やときっと一緒にいれへんよ？」

総司くんは京の街で人気者だ。打ち上げで行く花街の姉さん方は我先にとお酌を競うし、年頃の町娘たちは総司くんが通りを通る度に色めき合っているのを知っている。

「････そうかな？」

「そうやて。それに･･」

寂しそうに首を傾ける総司くんにポンポンと膝を叩いた。

「私が同い年やったらこんなこともできひんよ？」

「ははっ…、本当に･･君は子供らしくないね。」

ゴロンと転がって頭を乗せる総司くんが掌で顔を覆った。

「よしよし。」

「………ありがとう、A。」

表情は見えない、けれど泣きそうなだった。

ふわっ…

「………。」

乱れた前髪を少し梳いて、まだ慌ただしい屯所の音に耳を澄ませた。後日、池田屋の功績を認められてお上から莫大な報奨金が出るだろう。近藤さんは喜び、土方さんは人員確保の為に動き出す。それまで

「(どうか････)」

ちょっとでも休まればいい、と想いながら初夏の風の心地良さにそっと瞼を伏せた。