極小説。＜読み切り＞ (ページ7)

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座敷童子伝説の異色解釈　(2019/3/7) ページ7

岩手県遠野市にある、南部曲り家に上がると、何とも言えない懐かしさがこみ上げた。
　人の気配のない屋内だが、勝手に小さな座敷に入ると、着物を着たソイツが顔を上げた。
「おお。」
「何っだよ。その反応。老人？」
俺が吹き出すと、ソイツ…俺と、生まれた時から小学校までを共に過ごした古馴染までも、顔をほころばせた。
「さて、座布団に座っていい？……最近どうだ？俺はな、東大に受かったんだ。その内、テレビに出られるさ。」
「おらは、中学校から何も変わってない。」
屈託なくにっこり笑ったその顔が、夕陽に照らされる。
「…どういうことだ？」
「まあ、今日は泊まっていってくれ。そこで話そう。それより、ね、おらは最近、古本にはまっててさ。」
　そう言って、顎で本棚を示した。大量の本や巻物が目に入る。そういえばこいつは、家の中にいるのが好きで、読書家だった。
「それにも目的があって。おら、座敷童子について調べているんだ。」
「座敷童子？」
　先程から話についていけないが、都会の喧騒とは真逆の穏やかな口調に、とりあえずペースを合わせようと思った。目についた本の背表紙を反射的に読む。
「画図百鬼夜行…、東錦昼夜競…。これくらいしか読めないな。それにしても、時系列で並べたのは、スゲー。」
「ふふ。時間はたっぷりあるから、部屋片づけたり、標準語勉強したりして過ごしてるの。」
「『おら』はそのままだけどな。」
どちらからともなく、笑い声がはじける。

「で、いい？おらが調べたことについて、少し話したいんだけれど。」
「もちろん、いいとも。」
　本当はそこまで興味がないが、古典は好きだ。
「座敷童子にまつわる話はたくさんあって、どれか一つが正しいとはいえないけれど、おらはある説を立てたんだ。」
　幼馴染の瞳が、ポウワッと光った。

　続く