涼くん……［黄○］［男主］ (ページ5)

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「っはー、わかんねっスよこんなの」

『これってここに代入してxの値をもとめればいいんじゃないかな』

全く気づかなかったその人の気配。
突然後ろから聞こえてくる声、顔の横にノートへと伸ばされた手。

誰だこいつはと一瞬思った。
でも初対面で教えてくれるなんてとてもありがたいと思った。

その人の方を見れば黒髪に青い眼鏡、そして漆黒の瞳。

『算数苦手だったのに数学履修するなんてどうしたの？』

は？と思ったけど、どこかで見たような顔と思い記憶を辿った。

ダメだ、思い出せない。

『ｸｽｸｽ…なぁに？
じっと見たりなんかして』

言いながら彼は耳に髪をかけた。
その仕草もどうも見覚えがあった。

ああ、思い出した。

「A…？」

『久しぶり、涼くん』

バッと立ち上がってそれにビックリしたAは『わ、』と声を上げた。

「なん、でここに…」

『あれ、今日入学式じゃなかった？まさか1日早く来ちゃったとか』

「いや、それはあってるんスけど…違うそうじゃなくて！なんでAがこの大学に？」

『ここの大学しか受からなくてさ、初めての都会だから不安いっぱいだったんだけど涼くんが居てくれて安心しちゃった』

ここしか受からないって…
ここの偏差値はエグいくらい高いはずなのに…？

俺はスポーツ推薦で入ったようなもんだからバスケの成績すら落とさなかったら留年も退学もならない。
最低限は必要だけど。

「ここ、偏差値いくらかわかってる？」

『60とか？』

「75っスよ…」

『あ、そんな高かったんだ。
じゃあ僕ラッキーだね、この大学に受かったなんて』

俺のAに対する記憶なんて小6で止まってる。
その時Aは小3で勉強が苦手だった。
これでも俺がAに勉強を教えていた。

それがまさか、センターで受かるなんて思わないっスよね普通。

「あ、いたいた！もー急にどっか行くなよな！」

焦げ茶の髪をした俺と同じぐらいの身長でAを見つけるなりこちらに走ってきた。

『ごめんごめん』

「新入生、召集かかったべ！」

『あ、もうそんな時間なんだ。
先行ってて、すぐ行くから』

「おう、すぐ来いよー」

『うん、ありがと。

入学式の後、時間あったりする？』

見上げてくる漆黒のその瞳に吸い込まれそうになる。
反射した日差しに瞳が照らされ透き通っていた。

「あるっスよ」

反射的に答えてしまった。
今から黒子っちたちとバスケをすると言うのに。