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「明日さ、お前だけ抜けられる?」
「え、クビ…?」
「違うわ。Aちゃん、どっかで一日休み取らせようと思ってたんだけど。急にフリーにさせても持て余すかもしんないし、どっかテキトーに連れ出してやってくんね?」
あいつの保護者から「存分に働かせて休ませろ」とかはちゃめちゃなこと言われてんだわ、と続ける。
「嫌なら別に」
「そ、れはないっす!!ない!!」
「だよな。じゃなきゃお前ら全員そういう格好してこねーもんな」
曖昧に視線を逸らす。
Aが「この人たちどこ行っても目立つな」とぼやいていたのは耳に挟んだが、存在感くらい消そうと思えば消せる。
セラフや、アキラならむしろ得意分野だ。
でも誰一人として服装はさりげなく凝っていたし、最初から遠くから見守るつもりなんてなかったのである。
A以外にはお見通しなわけだ。
「お前ら明日もバイトするつもりっしょ?3人残れば、Aちゃんも安心して羽伸ばせるだろうし」
「え、けど、なんで俺…」
「今日のMVP。あと、楽器やってるよしみ」
実体の掴めない不快感が、そわそわとしたむず痒さに上書きされる。
お前も楽しんで来いよ、と笑った彼は、ひょっとしたら雲雀の胸に巣食う靄を、見抜いていたのかもしれない。
✦✦✦
朝、鏡の前で髪をセットしているとき、唐突に気づいた。
これ、Aとデートなのでは?
ぶわ、と一気に体温が上がって、正面に映る宝石色の目が丸くなる。
その後しばらく動けなくて、時間ギリギリになってしまった。
イブラヒムからの特別指令が明らかになると、残りの面々は非難轟々だった。
お前だけずるいぞー!と奏斗が叫び、セラフは半目になって圧をかけてきた。
この野郎、と呟いたアキラが舌打ちしたかどうかは定かではないが、後から彼は「Aのこと頼みますね」と静かに言った。
昨日、突然の来訪があってから、Aは少しだけ浮かない顔をしていた。
変なこと言わないでくださいよ、と抗議した通り、踏み込んだ質問をされた同級生のことを心配していたのだと思う。
今日のお出かけで彼女の気を晴らすのも、雲雀の役目なのだ。
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こうもり - ソルト(新アカVer)さん» ずっと書きたくてようやく出せました!!!!満たせて良かったです!!!!コメント嬉しいです、ありがとうございます!! (4月17日 20時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
ソルト(新アカVer)(プロフ) - hbc!!!!!!!!!!!!!!!(発作) 全話読ませていただきました!ありがとうございます!!!!!勝手に満たされております!!!!! (4月16日 22時) (レス) @page14 id: 8a1efc3bda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2024年3月31日 15時