鬼の血脈 (ページ30)

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弐拾肆話　従属ページ30

コンコン

「私よ。水無ちゃんもいるわ」

のばら姉さんの声だ。双織が扉を開ける。と璃々蝶が走っていった。

「水無!大丈夫か？」

その言葉は届いていないようだった。

「連勝!!良かった。生きてて良かった!!」

水無は涙声で叫ぶ。俺、下手すりゃ死んでたのかとどこか冷静に考えていた。

「俺!!ごめん!!ごめんなさい!!」

泣き叫ぶ水無は年相応の女の子のようだった。水無は未だに男言葉が抜けきらない。虚勢を張っていた名残。傷付かないための一線を退いた言葉遣い。それを忘れたように叫んでいた。

「今回は自覚してたのに!また、負けた!!自分に！血にまた負けた!!」
「今回は自覚があったのか!?」
「そうだよ。自分の意思で変化したんだ。連勝を護りたかったんだ」

水無の小さな手に涙が零れていく。

「でも、また傷付けた!!俺のせいだ!!もういっそのこと消えてなくなりたい!!」
「ふざけんなよ」

怒りに声が震えるのがわかる。消えてなくなりたい。だと？バカ言ってんじゃねぇ！

「馬鹿なこと言うな!!」
「君に何がわかる!!漓々蝶も連勝も、なんにもわかってない!!自分の手が大事な人の血で染まった気分を!血の味のする口の中。自分のせいで大事な人を瀕死の状態に陥れた気分を!母をこの手にかけた苦しみを!!わかるか!?わかるわけないだろ!!俺の気持ちなんか、お前らにはわからねぇよ!!人を傷付ける痛みを知ってるか!?護りたいと思えば思うほど傷付ける!!」

水無は叫んで喚いてまた壁を作った。男言葉。強がり。そしてまた逃げるように部屋を飛び出して行った。

「漓々蝶」
「あぁ、やはり話すべきだな」