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拾話 真名 前半 ページ13

「なぁ」

ある日の帰り。俺は気になっていたことを聞いてみることにした。

「紅鬼院はクラスメイトを友達とは思ってないのか?」

妖館のやつら以外に笑顔を向けない。コイツはクラスメイトを哀しみの眼で見ていた。

「思いたくても思えないんだ」
「?」
「そうだな…この際だから全部話すよ。反ノ塚は俺のSSだしな」

悲しそうに俯いてから俺の目を見て話し出した。

「紅鬼院家は、鬼の家系だ。でも、ただの鬼じゃない」

いつか、残夏がいっていた言葉を思い出す。
“みなたんは危ないんだよ”

「俺は…」

一瞬躊躇い、しかし決意し紅鬼院は告げた。

「俺は、吸血鬼の先祖返りだ」
「なっ…」

言葉が出なかった。
吸血鬼…だと!?

「紅鬼院水無は本当の名じゃない。本当の…先祖返りの名は紅血鬼薔薇。血に餓えた鬼の末裔だ」

だから、危険だって言ったのか。血に餓えた鬼の末裔。紅血鬼は聴いたことがあった。暴走しやすい危険な先祖返りで随分と前に滅ぼされた…と。

「紅血鬼家は、先祖返りを忌み嫌った。しかし、富を失うことを恐れ殺せなかったんだ」

富や名誉を守るために先祖返りを恐れつつ生かす家は確かにある。御狐神のところのようにな。

「俺は、吸血鬼の先祖返りとして、生を受けた。そして、吸血鬼の特性をいままでで一番引き出した」

特性?

「吸血衝動、人を惹き付ける力、飛行能力とかだよ。映画や偶像の中では吸血鬼は美形で描かれるだろ?」
「あっあぁ」
「でも、そうじゃない。美形だから人が寄ってくるんじゃなくて、自分を相手の好みに見せているんだ。そして、獲物を誘い込む」
「じゃあ、今、俺の見ているお前は本当の姿じゃないのか?」
「違う。その力が真に発揮されるのは変化してからだ。それに同じ先祖返りには効かない。でも、一般人は、変化していなくても、近寄りたいとかそう言う気持ちになりやすくなるんだ。だから、本来の俺をちゃんと見れるのは反ノ塚とかだけなんだよ」
「だから、特別扱いを拒んだのか」
「そう。友達になりたかったんだ」

嫌なもんだな。たくさんの人に囲まれても、本来の自分を見てくれる奴はいない。友達になりたいとコイツがどんなに願っても、相手は自分を見ていない。叶わない願いだなんて。
どんなに人気者でも、“本当の愛”は手に入らない。

「なりたかった。でも、なれないさ。わかってる。無い物ねだりをするほど俺は子供じゃない」

前を歩く紅鬼院の背中は重く沈んで見えた。

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作者名:C`S | 作成日時:2015年2月26日 17時

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