第22話 持っているもの ページ22
「私さ、昔っから何やってもあんまり上手くいかない人でさ、みんなが普通やらないようなミスを頻繁におこすの。」
「…知ってます。」
「えっ…なんで！」
「…見てればわかりますよ。」
「…。」
そっか、うん、そうだよね。
部活でも何回かやらかしているし、部員に気付かれていても確かにおかしくはない。
私は話を続けた。
「それで、2度と同じ失敗を繰り返さないために、起こした失敗の教訓を片っ端から書き留めたメモ帳を作り始めてさ。それがこの前、流川君に見られたアレなの。」
そう言った瞬間、もしかしたらこの子忘れてるかもしれない！と一瞬よぎった私は、" ほら…！一緒に洗濯してた時！" と説明を付け加える。
そんな私の心配をよそに流川君は、
「あー…大体そんなことだろーと思いました。」
とケロッと答えた。
まさかそこまで予想されていたとは。
…うむ。なかなか察しの良いやつだ。
「その甲斐あってか、昔に比べてだんだん失敗が減ってきたの。」
「…。」
と言っても、まだ全然することにはするんだけどね…と苦笑いをしてみせる。
流川君は、長い間動かさなかった目線をやっと空から私へと移し、黙ってそれを見た。
顔は相変わらずの無表情で、何を考えているかはわからない。
「やっぱり失敗を減らすにも限界があるみたいで、私が人並みに追いつくことは叶わないのかも…」
言っていて少し涙が出そうになった。
私が努力しても手に入らないものを、別の誰かが生まれながらにして当たり前に持っていることの辛さ。
その逆も同時にあるならば、まだ受け入れられるけれど、今のところ自分にはそんなものは見当たらない。
見つけるのが下手なだけ？
いや、きっと私が何も持っていないんだと思う。
「私がもっとしっかりしてたら…。彩子みたいに、みんなから頼りにされるような存在だったら。」
「…。」
「宮城君も私のこと、少しは考えてくれたのかなあ…。」
溢れ出そうになる感情が喉の奥につっかえて。
少し声が揺れてしまった。
こちらを見る流川君の目線がなんとなく気まずくて、私は体育座りの状態のまま顔を膝に軽くうずめた。
あんまり泣きたくないな…。
完全に偏見だけど、流川君は目の前で泣かれることを嫌がりそうだ。
これ以上彼に迷惑はかけられない。
「これは、俺の勝手な意見なんすけど…、」
流川君はゆっくり空へと視線を戻しながら、遠慮がちに口を開きはじめた。
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わた丸(プロフ) - メガネさん» そう言って頂けて大変嬉しいです。不定期で申し訳ありませんが、完結まで更新頑張ります！ (2023年2月27日 16時) (
レス) id: 889abdf4ce (このIDを非表示/違反報告)
メガネ - 夢中になって読みました。ありがとうございます。続きが気になりすぎる (2023年2月27日 1時) (レス) @page30 id: 434307a1aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わた丸 | 作成日時：2023年2月5日 14時
