EP7 ページ43
「おふたりは付き合ってないんですか?」
昔はよく、色んなインタビューで言われたものだ。
それ程までに俺と翠は常に一緒にいた。
同期で、事務所も同じで、翠の方が3歳年下だったけど歳も近くて。
活動初期から何度も共演して来たから、自然に親友になった。
翠は成長する度、どんどん大人っぽくなって。
それでも、子供っぽい無邪気さを忘れていなかった。
だからこそ、皆に愛される女優だったんだろう。
「いえいえ、付き合ってませんよ」
「幼なじみみたいな感覚だよね〜」
「うん、そうだね」
昔は翠が俺の前を歩いていた。
何処だってそうだ。
仕事も翠は1人でたくさんの努力をして、誰よりも最前を進んだ。
テーマパークも街歩きも、翠が1人で楽しそうに前を歩き、時に振り返って「将暉君、遅いよ」「こっちこっち」「あそこ行こうよ」なんて笑顔で言っていた。
だけど、今は違う。
俺が前を歩き、翠の手を引っ張る。
翠は怯えながら、歩きにくい足を無理に動かして、必死に俺についてくる。
どちらにせよ、俺の位置は変わらないのだ。
翠が前にいるか、後ろに行ったかの違いだ。
……横に並ばなきゃ。
翠の横に並ばなきゃ。
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作者名:hoshina
作成日時:2019年10月7日 19時