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退所した事務所の中に入る事程気まずい事はないと思う。
会議室のような場所に通され、そこには既に社長さんと将暉君のマネージャーさんがいた。
2人は私を見て目を見開く。
「菅田さん、これはいったい……」
「お話したい事があります。
僕……一ノ瀬翠さんと交際をしています」
私は、3人の顔が見れずにずっと下を向いていた。
怖かった。
何を言われるのか。
怖くて怖くて、体がガクガクと震えた。
そんな私に気がついたのか、将暉君がしっかりと手を握った。
「俺は本気です。
もう翠を傷つけたくない。
だから、熱愛報道が出る前に報告をしました」
逃げ出したい。
早くここから消えてなくなりたい。
「っ………私、将暉君がいたから、ここまで来れました。
2年前から変わってしまった私に、何度も何度も接してくれて。
だから……私も、少しずつ前に進めるように、なって。
………こんな私が、将暉君と付き合っていいのか…未だに、自信ないけど。
でもっ、私は将暉君が大好きです。
………だからっ…」
苦しい、怖い、助けて。
「……わかりました。
菅田さん、後日また詳しい事は伺いますよ」
将暉君が静かに頷いた。
「翠ちゃん、久しぶり」
社長さんに話しかけられ、大袈裟に体が跳ねる。
「菅田くんなら、きっと翠ちゃんを幸せにしてくれるよ。
素敵な人に出会ったね」
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作者名:hoshina
作成日時:2019年10月7日 19時