Spica【菅田将暉】 (ページ31)

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「………ん」

目が覚めたのは、あれから5時間後。

カーテン越しに朝日が部屋に射し込んでいる。

ゆっくりと視線を動かして、俺は小さく笑った。

真横で、丸まった翠がすやすや寝ている。

相変わらずぬいぐるみを抱きしめて、幸せそうに眠っていた。

優しく頭を撫でる。

幸せな朝だ。

こんな朝を、ずっと夢見ていた。

嗚呼、実現するとこんなに幸せだなんて。

「………ん……ぅ…」

暫く寝顔を見つめていたら、翠が眉を顰めてからゆっくりと目を開ける。

「おはよ、翠」

翠がぼんやりした目をぱちぱちと瞬きする。

「……おは、よぉ…」

また寝そうになっている。

俺は笑った。

「翠、今日はドイツ村と海ほたる行くんやろ？
はよ準備せな遊ぶ時間無くなるで？」

「……んー、眠い…」

まぁ確かに。

昨日はディズニーではしゃぎまわったうえ、深夜に喘息で起きているのだから、睡眠は足りていないかもしれない。

「移動中寝てもええよ」

俺が1人で運転すればいい話だ。

話し相手が居ないのは寂しいが。

「ん、準備するぅ」

未だにぼんやりしている翠が起き上がり、立ち上がる。

途端、フラついた。

「っ…！！」

俺は驚いて、慌てて手を出す。

翠が倒れる前に支える事が出来、安堵のため息をついた。

「良かった……」

「……ありがとう、目…覚めた」

少し悔しそうな顔をした翠が言う。

今まで普通に歩けていたものが、上手く歩けなくなる。

経験していないからわからないけれど、きっと2年経っても慣れない部分はあるんだろう。