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暫くして、ゆっくりと治まっていった咳。
翠はボロボロと泣きながら「ごめん……なさっ…ごめ、」と謝り続けていた。
泣いたら、また苦しくなってしまう。
「翠、謝らんといて?」
「っ…だっ、て……っく……ひっ…ぅ」
「泣いたら苦しくなるから」
「ひっく……ん、っく……まさ、き……く…に、っ…めいわ、くっ……かけ、ちゃっ…」
翠は元から体が弱い。
喘息持ちというのも公表している事だった。
「迷惑やないよ、大丈夫」
翠の涙を指で拭う。
翠が瞬きをする度に落ちてきて、俺は苦笑した。
「せやから、もう泣かんくてええねんで」
「っ……うん」
「俺、翠に頼られるの嬉しいよ。
やから、もう迷惑なんて考えんといてよ。頼ってええよ。甘えてええよ。嬉しいから」
翠の頬を両手で優しく支え、言葉の勢いでゆっくり翠にキスをした。
翠はビクッとするものの、拒まなかった。
角度を変えて、ゆっくり優しくキスを続ける。
「ん………はっ………ぅ…」
翠が弱々しく俺の胸元の服を掴んだ。
俺は更に翠を引き寄せてキスを続ける。
ポロッと翠が涙を零した。
我に返り、慌てて離れる。
「どう……しよ……将暉、君」
「っ……ごめん、翠…」
翠は泣きながら首を激しく横に振る。
「私………幸せすぎて、怖いよ……」
「……え」
「っ……怖いよっ…私っ…」
強く翠を抱きしめた。
「…怖がらんで。
翠。………俺、翠が好きや。
ずっと前から、翠が好き。
もう、翠を傷つけない。翠を幸せにしたい。
やから………俺に、翠を守らせてくれへん?」
「っ………」
翠は目を見開いて、それから慌てる。
幸せすぎて怖い、なんて言ってたくせに何を今更。
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作者名:hoshina
作成日時:2019年10月7日 19時