・ ページ13
次の日から長野での撮影が始まった。
撮影はかなりスムーズに進み、地域のロケ弁や、休憩時間には近くのお店も紹介して貰った。
せっかく地方ロケに来たし、と監督を含めたキャスト達が飲み会を計画していた。
もちろん、出席するのが礼儀である。
…だが、俺は翠に会うと前日から決めていたのだ。
「長野に住む知人にせっかくなので会いに行きます。
遅れていきますね」
あながち嘘でも本当でも無いことを口にして、割と早めに終わった撮影現場から逃げるように去った。
今日もspicaにやってくる。
またマカロンとクッキーを買おう。
昨日はホテルで食べたのだが、あまりの美味しさに感動した。
とても優しい味がしたのだ。
そのような表現をする人はよく見るが、そんな味が本当にあるだなんて思いもしなかった。
俺がマカロンとチョコのクッキーをレジに持っていくと、男性の店員が相手をした。
名札は『spica 一ノ瀬廉』
翠の2歳上の兄だ。
「…菅田さん、ですよね」
小さめの声で尋ねられ、思わず大きく頷いた。
兄は苦笑してから「どうぞ」と昨日も通ったドアの方を手で示した。
56人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:hoshina
作成日時:2019年10月7日 19時