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次の日から長野での撮影が始まった。

撮影はかなりスムーズに進み、地域のロケ弁や、休憩時間には近くのお店も紹介して貰った。

せっかく地方ロケに来たし、と監督を含めたキャスト達が飲み会を計画していた。

もちろん、出席するのが礼儀である。

…だが、俺は翠に会うと前日から決めていたのだ。

「長野に住む知人にせっかくなので会いに行きます。
遅れていきますね」

あながち嘘でも本当でも無いことを口にして、割と早めに終わった撮影現場から逃げるように去った。

今日もspicaにやってくる。

またマカロンとクッキーを買おう。

昨日はホテルで食べたのだが、あまりの美味しさに感動した。

とても優しい味がしたのだ。

そのような表現をする人はよく見るが、そんな味が本当にあるだなんて思いもしなかった。

俺がマカロンとチョコのクッキーをレジに持っていくと、男性の店員が相手をした。

名札は『spica 一ノ瀬廉』

翠の2歳上の兄だ。

「…菅田さん、ですよね」

小さめの声で尋ねられ、思わず大きく頷いた。

兄は苦笑してから「どうぞ」と昨日も通ったドアの方を手で示した。

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作者名:hoshina
作成日時:2019年10月7日 19時

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