車輪の唄【菅田将暉】 (ページ5)

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「…そっか。
……ごめんな、引き止めて」

男子生徒はそう言って、歩き出す。

「あっ……あのさ」

彼はゆっくりと足を止めた。

「貴方は…さ、菅生君と友達なの？」

男子生徒は息を呑んだ。

……嗚呼、一緒なんだ。

この人はただ、周りの人に流されて彼の傍にいるだけ。

彼は優しいから、どんな人にでも話し掛けるし、話を振るだろう。

でも、「友達」と言える程、話したのだろうか。

彼は、自分を「友達」だと思っているのだろうか。

自分だけが、「友達」だと思い込んでいるのかもしれない。

だから、怖いんだ。

今の自分の立ち位置は、きっと誰でも居座る事が出来る位置だから。

その位置を誰かに取られてしまうのが怖いんだ。

自分はまだ、「王子の取り巻き」としての立ち位置に縋っていたいから。

「………どうやろうね」

目を伏せて、男子生徒は言う。

「……一緒だね」

口をついて出たのは、そんな言葉。

一緒だ。

彼にとって私やこの男子生徒の立ち位置は、代わりが沢山居る場所。

友達にすらなれていない知人。

私達と彼、菅生大将は明らかに違う。

乗り越える事の出来ない壁がある。

それに気づいているのは、きっと私達だけだ。