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『予約』
私と彼の間では、未だに予約制度が残っていた。
この日、彼がメールで言ってきた予約は次の日に私が受けている授業で行われる、調理実習のマフィンだった。
彼と私では取っている授業が少しだけ違う。
その為、彼はマフィンを作らないのだ。
調理実習だから、私1人でマフィンを作る訳じゃない。
それに、王子菅生大将には、きっと女子から沢山のマフィンが貢がれるだろう。
そう言ったが、彼は譲らなかった。
その為、しょうがなく次の日に綺麗にラッピングしたマフィンを手に持ち彼を探した。
もちろん作ったマフィンは私だって食べたいので、少し多めに作って自分の分も確保済みだ。
バレンタインも近いので先生がラッピングの時間を取ってくれたが、その時に聞こえてきた声の主達は皆、彼に渡しに行くと言っていた。
ほれみろ。
ようやく見つけた彼は、やはり女子に囲まれていた。
私は小さくため息をつく。
さて、どうしたものか。
彼の前にある机にはマフィンが沢山ある。
あれ、全部食べるのか？
まだ数人並んでるし、渡し終わった人達もいつまで経っても離れそうにない。
「………」
「大将、呼ぼっか？」
悩んでいると、彼の親友が気を利かせて私に言った。
「ごめん、お願いしてもいい？」
「あれじゃ無理やもんねぇ」
親友はケラケラ笑う。
この人だけは、私と彼の関係を知っている。
いつか、「アイツ、サラッと惚気けるんやけど、どうにかしてくれへん？」って笑いながら言われた事がある。
「おーい、大将〜」
彼がこちらを見る。
「あっ！」
彼が人だかりを掻き分けてこちらにやって来た。
女子達の視線が痛い。
「はい、大将くん予約のマフィン」
「ありがとう〜！！」
「お金取るね」
「それは困る〜」
彼もケラケラと笑う。
「あ、でもめっちゃ美味かったら金払ったるわ」
「いやいや、冗談だから要らないよ」
彼はキラキラした目で「食べてもええ？」と聞いてくる。
家で食べなよ、と返すと彼はマフィンが山盛りの机をチラリと見た。
「どれが結菜のかわからんくなるやん。
それに、出来たてが食べたい」
私は小さく笑う。
「じゃあ、どうぞ」
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作者名：☆友梨ぃ☆
作成日時：2019年6月23日 15時
