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「音楽、好きなん？
いつもイヤホンしとる」
蒸し暑い空気の中、彼がイヤホンを外しながら言った。
「好きだよ。大好き」
聴くのも、歌うのも、ギターを弾くのも、ピアノを弾くのも。
何をするのも好きだ。
「そっか」
「菅生君には無いの？好きな物」
彼は暫く考え込んで「いっぱいあるで」とだけ答えた。
私は深くそれについて聞かなかった。
好きな物は沢山あっても、「じゃあ何のどんな所が好き？」と問われたら、私だったら困ってしまうから。
好きな物は好きなんだし、好きになったのだから、それに理由など存在しない。
明確な理由がある場合もある。
でも大抵は「あぁ、好きだなぁ」とぼんやり思うところから始まるのだろう。
「菅生君、アメフト部だよね。
部活、行かなくて大丈夫なの？」
彼はチラリと時計を見た。
「ああ、今日は部活あらへんから」
「じゃあ、なんでこんなに遅くまで残ってるの？」
彼はバツが悪そうに頭をかいた。
「あー……っと、その…」
誰にも言わないで欲しいねんけど。
そう前置きしてから、彼は小声で私に聞かせてくれた。
「俺な？数学教師になりたいねん」
「いいじゃん」
「せやから、ちょっと相談に…」
「そっか、頑張れ」
ガッツポーズをする私に、彼は少し驚いて笑う。
「春原さんって、そんな事するんや」
「え、どういう事」
「春原さん、いつもイヤホンしとるし、机に伏せるか本読んどるかの2択やし。
…せやから、なんか勝手にクールな人やなぁ…って」
私はまた、クスッと笑った。
よく言われる事だ。
「人に干渉するのが嫌いなのかも。
思い込みや噂で判断するんじゃなくて、ちゃんと私がこの目で見て思った印象で人を判断したい」
「なるほどなぁ……」
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作者名：☆友梨ぃ☆
作成日時：2019年6月23日 15時
