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16枚目 ページ16

スケッチブックを絵で埋める。

そんな作業ばかりしていた頃。

突然甲斐君がお店にやって来ました。

「久しぶりにぶっきーの墓に行こうと思って」

私は慌てて「私も行っていい?」と問いました。

彼は笑って「お前に用事がなければそのつもりだった」と言いました。

彼の印象は随分と変わったように思います。

クラス1の悪大将の面影は消え、とても優しく柔らかくなりました。

元々、根から悪い人ではありませんし、幼い弟や妹の世話もしっかりしていた人ですから、今の姿が素に近いのかもしれません。

私はツワブキの花とピンクのツバキの花を花束の中に入れました。

私の誕生花と、貴方の誕生花です。

貴方の誕生日が12/21。

私の誕生日が12/28。

数日違いだと、盛り上がったのもいい思い出です。

ツワブキは貴方が好きだと言ってくれた、私も好きな花です。

私はその花束とスケッチブックを持って甲斐君の車に乗り込みました。

「また近いうちにさ、飯でも食いに行こうよ」

彼は前を見て運転しながら言いました。

私は頷いてから、「次にこういう事をする時は連絡して」と言いました。

彼は苦笑して、珍しく素直に「ごめん」と謝ってきました。

やはり、あの頃とはもう違う人物のようです。

貴方のお墓はとても綺麗でした。

頻繁に人が来るのでしょう。

それが元クラスメイトである事を密かに願いました。

貴方は何事も無かったかのように自身の墓の上に座っていましたね。

私が驚くと、してやったりな顔をして『遅い』と言いました。

私は花束とスケッチブックをお墓の前に置きました。

「何でスケッチブック?」

彼が私に問うてきたので、私は答えます。

「私が1歩ずつ前に進もうとしたその過程。とりあえず、先生が描きたいのに描けなかった景色と、私の好きなもの、大切な思い出を模写しました」

貴方がスケッチブックに手をかけると、強い風が吹いてページが捲れました。

ピタリ、と止まったページは3年A組の集合写真の模写でした。

幸せそうな貴方、楽しそうに笑う澪奈と皆。

「これ…」

彼も貴方も、その絵に見入っていました。

私は照れくさくて、慌てて口を開きます。

「宝物です。私の」

きっと一生、宝物になるでしょう。

私達や澪奈を救う為、命をかけた先生がいて、私達は先生から生き方を学び、世界中の人々も自分の生き方を見直す。

ここまで大掛かりな世直しのやり方が今までにあったでしょうか。

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設定タグ:3年A組 , 柊一颯   
作品ジャンル:タレント
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hoshina(プロフ) - ひいらぎさん» コメント頂きありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです。僕もなんで先生死んじゃったの……って今でも悲しい気持ちになります… (10月22日 10時) (レス) @page19 id: caa281a59c (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ - 読む度に涙が止まりません。ぶっきーなんで死んじゃったの、 (10月20日 23時) (レス) @page19 id: e6c1a53c18 (このIDを非表示/違反報告)
hoshina(プロフ) - 蒼炎さん» ありがとうございます!! (2020年1月21日 9時) (レス) id: 8ee6c3887f (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - めっちゃ感動した………!最高かよw (2020年1月20日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:☆友梨ぃ☆
作成日時:2019年6月11日 22時

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