静かな部屋で【3年A組】 (ページ11)

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次の日は、病室に初めてさくらちゃんが来た。

私が記憶を失っている事を既に知っていて、優しい顔で思い出話をしてくれた。

どれも楽しそうなお話ばかりで、聞いているだけで何度も笑った。

さくらちゃんが一生懸命話してくれるから、この日は聞いた話を他人事だとは思わなかった。

なんだか、もう少し頑張れば思い出せそうなくらい、どれも少し親近感のあるような話だったから。

さくらちゃんと話した時間は短かったように思う。

……いや、柊先生が長く居すぎなだけかもしれないけど。

授業ノートの写しを最後に渡してくれた。

いつでも有栖のペースで戻ってきてね、って言葉と一緒に。

「じゃあ、行くね」

そう言うさくらちゃんを、呼び止めた。

今日、その話が1度も出なかった。

でも、さくらちゃんだって気にしているハズだ。

「………澪奈ちゃんの事…………ごめんね」

「………有栖。澪奈ちゃんじゃなくて、澪奈。
有栖は呼び捨てで呼んでたよ。
…あっ、私の名前もね」

さくらは、何も責めて来なかった。

「悔しいけど、有栖のせいじゃないよ」って。

さくらがいなくなった病室で、溢れて止まらない涙を布団に染み込ませながら、私はひたすら泣いていた。

「っ……責めてよ…」

まだ、わからない事だらけだ。

でも…「なんでお前だけ生き残ったんだ」って、責めて欲しかったんだよ。