文学少女の手記【3年A組】 (ページ35)

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文学少女は無力であるページ35

澪奈はよく武智先生に呼ばれるようになった。

少女は彼から武智先生の事を聞いていたから、不安であったが、澪奈は何も相談してこない。

彼から聞いた話は2人だけの秘密故に、澪奈に気安く聞くことは出来なかった。

ただ、帰ってきた時の澪奈の顔から、まぁいい話ではないだろうなとは思う。

少女の中での武智先生は既に悪い奴だ。

ジャッジなどとうに終わっている。

だから1度、うんざりしたように武智先生の元に行こうとする澪奈を呼び止めた事がある。

「行かないでよ」

そうしたら、澪奈は無理に笑って言った。

「行って、説得する」

少女はその表情をずっと忘れていない。

まるで魔王を倒しに行く勇者のように強くあろうとする表情。

それなのに、澪奈本人の持つ弱さが滲み出ていた。

少女は何も出来ない自分を悔やんだ。

泣きそうになって下を向く。

澪奈は、そんな少女の頭を優しく撫でて少女に背を向け去って行った。

その後、ボロボロと溢れた涙は偶然通りかかった彼によって止められた。