文学少女の手記【3年A組】 (ページ20)

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文学少女と創造ページ20

「先生は、どんな世界に行きたいですか？その世界で、何をしたいですか？」

部員全員が帰った美術室。

少女と彼はまだその場に残り、思い思いの事をしていた。

「……世界で何を、か」

少女は頷く。

少女と澪奈はあの日に5時間──いや、時間なんて概念がなければきっと永遠に──話した事。

「…そうだなぁ」

彼は楽しそうに微笑む。

「魔法が使える世界の支配者……とか？」

「想像出来ない」

少女の考えるそういった類の支配者は、悪者というイメージだ。

穏やかな彼からは想像が出来ない。

「でも、酒井なら創造出来る」

「言葉遊びですか？」

少女は少し笑った。

「うん。でも、酒井なら出来る」

「先生がとんでもない悪者になるかもしれませんよ？」

「それならそれで良いね。
酒井が俺をどんな風に悪くするのか、興味があるよ」

少女はケラケラと笑った。

「じゃあ──『我らの国を治めていた柊一颯は、とんでもない重罪を犯した！！皆の者、奴を処刑せよ！！』なんて事になるかも」

「それなら俺は魔法を使って逃げよう。

遠く遠く離れた所で、能力を捨てて生き延びようかな」

「ふふっ……人並みに恋をして、結婚をして、子供が出来て……もしかしたら、子供が先生の能力を引き継いで大魔法使いになるかも！」

彼は笑って少女の頭を撫でた。

「酒井が前に書いていたのは、社会派ストーリーだったね。
でも、酒井はファンタジーも書けるんだ。
……今の酒井は、生き生きしてる」

少女は、話の設定を考えるのが1番好きだった。

少女の家には設定だけが書かれたノートだって存在している。

「ファンタジーは楽です。
好きなように世界を作れます。
…自分だけの、理想郷が作れるんです」

「………理想郷、ね」

この世界でも作れたなら、どれだけ楽だろうか。

しかし、そう上手くいかないのが現実である。