AD‐LIVE

神谷浩史、小野大輔 公演 1 ページ10

神谷「ちょっと早く着いちゃったかなぁ…？

場所はここでいいと思うんだよ。

ポスター貼ってあったし。

『過去の自分を捨てられる』場所。

人気アイドル『モヒカン』のコンサート会場…って」

独り言を永遠としゃべり続ける男。

だがしかし、早く着いたからといっても、ライブはとっくのとうに終わっている。

独り言を聴く者などいないまま、独り語りが続く。

どうにも落ち着かないようだ。

もともとクールな性格ではない。

つまらない時は独り語りがいい。

小野「あの…すいません」

やけに遠慮がちに話しかけてきたな。

誰もいないホールなら、彼も同じ用件だろうに。

神谷「はい、なんでしょうか」

小野「ここ、モヒカンの会場であってます？」

神谷「ああ、貴方も招待状を」

小野「…ってことは、貴方もですか。

よかった…道が全然わからなくて心配だったんですよ」

神谷「ここら辺に住んでる方では無いってことですね」

遠慮がちな男は首をひねった

小野「それが…わからないんですよ」

神谷「え？」

いや、家がわからないって何？

小野「実は…記憶が何もなくて…

自分の名前すらわからないんです」

神谷「あー、そういうこと！

過去の自分を律儀に捨てちゃったのね」

小野「あ…ああ、ポスターにかいてありましたね。見ました」

神谷「僕は霧野神也っていいます。

シンヤのシンは神なんですよ！だから、自称神を名乗ってます」

小野「カミヤじゃねぇか(ボソッ」

神谷「なにか？」

小野「いえ。

『マラカス』…みたいですね」

神谷「褒め言葉なんです？それとも、貶されてます？」

記憶がないという記憶喪失の男が焦ったように手を振る

小野「マラカスってあの…カラオケとかで使われるでしょう？

場を盛り上げることの出来るっていうか…

そういう素質があるのかな…なんて」

神也は気を良くしたようだ。

神谷「君の事をなんて呼べばいいかわからないな。

『ペルシャ猫』みたいな雰囲気だから、ペル君ね」

小野「ペル…

本名からかけ離れてる気が本能でしてますけど、嬉しいです！」

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