1つの灯りが芽吹く時。

17話 ページ17

ガチャ、と相手が電話に出る音がした。

『もしもし』

あの日から変わらない、彼女の声。

「……もしもし、私。
矢島朱莉です」

『朱莉？どうしたの？』

「………相談が、あるんだけど…」

『……うん』

「あのね、さくら…」

今までの事を全部話した。

先生との子供を妊娠した事も、苦しむ先生に対して何も出来ない事も。

途中からは泣いてしまい、さくらにはとても迷惑を掛けたと思う。

『……朱莉、まず泣き止んで』

さくらの変わらない優しい声。

私はゆっくりと気持ちを落ち着かせた。

『大変なんだね…。
ごめんね、全然2人の所に行けなくて』

「………さくらも大変でしょ…」

『いやいや、私は全然なんだけど。
なかなかね〜……。
……朱莉、朱莉が先生の病気に対して苦しくなったり悲しくなったりするのは当たり前。
私だって朱莉の立場だったらそうだよ。
……でも、朱莉が諦めちゃだめ。
きっと先生は、朱莉がそばに居てくれるだけですごく元気になれると思うよ。
だって、そう言ったんでしょ？
「朱莉と、子供がいるから頑張ろうって思える」って』

「…うんっ」

『朱莉も、体辛いと思うけど……2人ならきっと大丈夫だよ。
支えあって。
私も近いうちに…先生の所に行かなきゃなぁ』

「…ふふっ、来てよ。
……待ってる。
……さくら、ありがとう」

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