22話 ページ22
「……一颯さん」
「………朱莉」
「赤ちゃんにね、声を掛けてあげてください、って。
赤ちゃんに、私たちの声は聞こえてるから、って。
それとね、赤ちゃん…よく動くんです。
元気に」
「……朱莉」
嗚呼、また痩せてしまって。
「一颯さん。
私、頑張る。
私より辛いのは一颯さんだもん。
……これからは、辛いって、苦しいって、寂しいって、一颯さんにちゃんと言います。
言うけど、ちゃんと頑張るから…。
私ね、母親学級…行き始めました。
赤ちゃんを迎えるために、頑張る事にしました。
だから、一颯さんは責任なんて感じないで、病気と闘うことに専念してください」
私はベッドの横の椅子に座って、ガリガリのその手を握った。
「………わかった」
先生は、もう片方の手で私のお腹に手を当てる。
「ちょっと動いてるの、わかりますか？」
「わかる………元気に、動いてるね…。
──朱莉、赤ちゃんの名前の事」
先生は、何処からかスケッチブックを取り出してきた。
先生が開いたページには、沢山の漢字や言葉が書かれていた。
「性別を聞いたあの日から、少しずつ考えてたんだよ。
朱莉。
俺達の名前を合わせるとね。
「1つの灯りが芽吹く」んだ」
「……1つの、灯りが芽吹く…」
「俺は、その1つの灯りが「愛」だと思ったんだよ。
だからね、愛って漢字を入れたかった。
そして……朱莉のように、優しい子になって欲しい」
先生が説明をしながら、スケッチブックの空いたスペースに漢字を書いていく。
「「愛優」……マユ」
「……マユ。……柊愛優」
とても素敵な名前だと思った。
「一颯さん、素敵です」
先生は満足げに微笑んで、スケッチブックを片付ける。
そして、私のお腹に再び手を乗せて語った。
「……愛優。君の、お父さんだよ。
……正直、俺がお父さんなんかになっていいのか、って未だに不安なんだけど。
君が…俺をお父さんにしてくれたんだね」
先生は、とても優しい顔をしている。
「俺は、君と長い事一緒には居られないだろう。
でも……君の事をずっとずっと愛してるよ」
私の方が泣いてしまいそうだ。
「……君に会うために、俺頑張るからね」
先生は明日、副作用が強く出る可能性が高いという薬を投与するらしい。
それが先生にとって良い結果になればいいけれど、苦しむのは確実だろう。
「頑張って。
私、ずっと隣で励まします。
だから、頑張って…一颯さん」
きっと、愛優もお腹の中で応援してくれるから。
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rina - hoshinaさんこれからも頑張れ! (2022年12月7日 23時) (
レス) @page37 id: 265817b150 (このIDを非表示/違反報告)
rina - 小説とても感動した (2022年12月7日 23時) (レス) @page37 id: 265817b150 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - とても読み入って、泣きそうになりました！！とても面白かったです！感動しました！ (2020年1月26日 13時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
hoshina(プロフ) - akiraikaさん» ありがとうございます！！そう言って頂けて、ホントに嬉しいです！！これからも頑張ります！！ (2019年6月12日 12時) (レス) id: 8ee6c3887f (このIDを非表示/違反報告)
akiraika(プロフ) - とても素晴らしかったです。一行読む度に涙が出てなかなか読み進められない。本当に素敵なお話でした。これからも頑張ってください。 (2019年6月12日 11時) (レス) id: f2ff021446 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：hoshina
作成日時：2019年3月15日 12時
