梟 の 止 ま り 木 。【木兎光太郎】

25話. ページ25

「…何これ。」


朝、起きてメッセージを見れば黒尾から訳の分からないメッセージが1件。


”止まり木チャン待ってまーす♡”


何を?


無視を決め込んで制服に腕を通す。


夏休みだというのに制服を着るのは面倒。


今までは梟谷学園グループの合宿があったから進学講習なんて参加したことなかったから余計に。


ずしり、と重いリュックを背負って歩いて学校まで行く。


早くに学校に着くのはもう癖で7時には家を出ていないと気が済まなくなってしまった。


15分ほど歩いて学校に着けば、学校の前に仁王立ちの光太郎。


言わずもがな部活ジャージ。


素通りしようと横を通れば、腕を掴まれた。


犯人はこいつしかいない。


「…何?」


「連行!」


「よくやった木兎!」


「木葉!荷物持って!」


「任せろ!」


肩から荷物の重みが消えて、目の前が真っ白ななにかに覆われた。


誰かに抱えられて暴れていればがっちり捕まった。


「しゅっぱーつ!」


ようやくおろされて白い何かをとれば梟谷学園の部活ジャージ。


学校がみるみる小さくなっていく。


埼玉の森然に向かっていることなんて分かりきっていた。


「…どういうこと。」


「連れてく。」


「引退した、って言ったよね。」


「そんなのやだ。」


「やだ、って馬鹿か!大体大学の話も」


「俺さあ、気の利いたことはなんも言えないけど。」


珍しく真面目な顔してこっちを見てくるものだから黙ってしまった。


何か言わなきゃ、と思っても言葉が出てこない。


「Aがマネージャーしてくれなきゃやだし、ずっとずっと一緒がいい。


春高も大学も、ずっと。


だから引退も、バレーに関わるのも、あと4年伸ばしてくれない?


4年たったらまた言うことあるから。」


「…。」


「だから俺たちとずっと一緒にバレーしよう!」


「…。」


「木兎てめええええ!そこは”大好き”って言うところだ馬鹿野郎!」


「お前等はバレーだけの関係か!?」


「だって!」


「だっても何もねえよ!ほら言え!お兄さん聞いててあげるから!」


「…4年。」


「!」


「4年付き合えばいいの?光太郎のワガママに。」


「ワガママじゃないぞ!?絶対幸せだぞ!?


なんなら前みたいに俺達が負けてAが泣くのだって我慢しなくていいし」


「それ普通言わねえよ馬鹿か!」


「泣かなくていいし、我慢しなくていいからとりあえず4年付き合って!」


「…4年伸びるだけだからいいよ。」


4年のワガママ契約を結んでしまった。

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