梟 の 止 ま り 木 。【木兎光太郎】

17話. ページ17

「外れた!」


「わかったから!わかったから…!」


次の日、朝一番で病院に行ってギプスを外してもらった光太郎は昼前には帰ってきた。


もう元気いっぱい。術後間もないからそれこそ部活はしないのだけれど。


「ギプス外れた!」と喜んで私の頭をぐしゃぐしゃと撫で回してご満悦。


髪を結おうがそれはお構い無しだ。


「だから合宿終わるまではAの手伝いする!」


「それは助かるな。よし、スーパーマネージャー、ドリンクを作りに行こう。」


「よっしゃ!」


猛暑と普段の倍動くことから、いつもは水で済ませるところを、合宿中だけはスポーツドリンクだ。


スポーツドリンクの粉を入れて水で溶かして、思いっきり振るだけ。


1リットル分の粉をそのまま入れるのではなく、やや少なめに入れて選手達がむせないようにするのがポイントだったりする。


梟谷と音駒の分ともなれば12本分にもなる。


つまり12kg。


苦ではないが何度も繰り返すとなるとそれなりにげんなりはする。


12本を作り終えて体育館に行こうとカゴを二つ持てば明らかに不機嫌になった光太郎が居た。


「Aのそういう所嫌い。けど好き。」


「え?わけわかんない。」


「A、優しいの好きだけど、なんでもひとりでやるから嫌い。」


「ああ、はい。これ梟谷の分ね。皆に渡せる?」


「音駒のも。」


「いや流石にそれはいいって。」


「………。」


「ごめんってば!」


カゴを二つ渡せばたちまちゴキゲンになる。


「よーし、Aイイコだ!」


「光太郎にそれを言われることになるとは…!」


これ以来、合宿が終わるまで私は重いものを持った記憶はほとんど無くて


マネージャーとして私にくっついて歩く光太郎を見た秋紀が


「A、マネージャー通り越して木兎のお母さんかよ」


なんて言ってきたけど


「…悪い気はしない。」


どこかやんわりと、ただし強烈な思い出を残して合宿は終わりを告げた。

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