第七十九話「思い出話」 ページ32
『やっと帰れるぜ。』
エリックさんからの話から約二時間後、私は特務課からの車で探偵社へと送迎されていた。
フロントガラスから外を眺める。いつの間にか外は夕焼けが溶けており、家に帰る人達が歩いていた。
「…結局今日は殴られ損ね。お前の実力を試すとか言って…殴りたいだけなんじゃないの?」
『当たり前だろ。彼奴は殴り殺したいだけの馬鹿女だ。』
フロントガラスから反射する私の顔が、相棒の不満げな顔に変化する。
「……相棒は、あの人の事よく知ってるのね。」
『そりゃもう。一番の天敵だからな!悪夢で魘される時は大体彼奴が出てくんぜ!!』
「嫌い過ぎでしょ…。」
ふと、相棒が生前、どんな人生を送っていたのか気になった。今まで私の体の一部、というかもう一人の私という認識で接してきた訳なのだが。振り返ってみると、相棒の昔の事なんて全然触れて来なかった。
豪国で名の知れた犯罪集団のリーダーという事は以前から聞いていたが、今の私は彼がそんな役職の人間だとは到底思えない。
「ねぇ相棒。」
『思い出話か?』
「…思考を読んだわね?」
『そりゃあ、俺とお前は一心同体だからな!!』
フロントガラスには、ニコニコと微笑んだ相棒が私を見ていた。
『俺の昔の話か〜!お前に悪自慢をする日が来るとは思わなかったぜ!!』
「悪自慢…ね。本当にそんな思い出貴方にあるのかしら。私は、貴方が本当に悪い人間だなんて思えないわ。」
すると相棒の表情は固まり、目を伏せる。少し切なげな顔をする。
「宮沢君から話は聞いたわよ。チンピラから女の子を守ったそうじゃない。優しいのね。ヒーローみたい。」
『あの野郎…。』
「ね、貴方優しい人なんでしょ?いつも私を守ってくれるし、それに条野さんとの仲を取り持とうとしてくれてんのよね?」
『だぁ!?何だそれ!?良い様に解釈し過ぎだろ!!?』
「んふふ、素直じゃ無いんだから!ほら相棒!探偵社まで時間はいっぱいあるわ!貴方の話を聞かせて頂戴!」
相棒は諦めたのか、溜息を吐き、やれやれと首を振った。何なのその態度。腹立つわね。
『条野の旦那にもそんな積極的だったらな…。』
「五月蝿いわね燃やし焦がすわよ!」
『やれるもんならやってみろよ能無しィ〜!』
「てか、話を逸らすんじゃないわよ!貴方の思考はお見通しなんだから!!」
『クソがよォ〜!』
相棒は夕日を眺め、唇を噛んだ。
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肉塊(プロフ) - 低鈴さん» 好きになってもらって何か嬉しいです。連載までまた少し待ってください。これから飛ばします (2022年12月11日 20時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
低鈴 - 何かめっちゃすきいぃぃぃ!ってなりました!更新頑張って下さい!応援してます! (2022年12月11日 20時) (レス) id: 8c328be9ea (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 花陽さん» いつも本当にありがとうございます。これからもまた心臓に悪い展開を続けていきますので何卒〜 (2022年7月29日 23時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
花陽(プロフ) - 続編おめでとう御座います、【熱】の血の花嫁編も佳境に入ってきまして、とても楽しく読ませて頂いております。此からも応援してます! (2022年7月29日 23時) (レス) @page1 id: 7fe3a7997e (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 三斗(トリップ願望者)さん» うぃ〜‼️ありがとうございます‼️これからも驚かせていきます! (2022年7月29日 22時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肉塊 | 作成日時:2022年7月29日 21時