第七十話「幸せ」 ページ23
中本side
自宅の寝室にて。ベッドに腰掛けながら、横浜の夜景を眺めていた。時刻は既に二十三時。気が付けば帰宅していた。条野さんと一緒に戦って既に一日が経とうとしていたのである。
「相棒。」
そう呼びかけると、脳内で『おう。』とぶっきらぼうな返事が返って来る。
「あの後探偵社に行って治療受けてくれたのね。」
『二回も死にたくなかったからな。』
「でも、ありがとう。助かったわ。」
『そうかいそうかい。お役に立てて良かったよ。』
相棒の声はいつもより少し高く、機嫌が良さそうだった。
「…条野さんから伝言、受けてない?」
『……いや?』
急に濁す様な喋り方になり、少し私は違和感を感じた。私は立ち上がり、向かいのテラスに出て夜風に当たる。
「あの後何があったの?」
『敵を倒した後即座に各自撤収〜。』
「…本当に?条野さんとは喋ってないの?」
『喋ってねぇ。』
私はテラスに置いてあるベンチに座り、深呼吸をした。
そういえば、前の家で条野さんと夜踊ったんだっけ。懐かしいなぁ。
「…次、いつ会えるんですか?」
そう呟くとそれに応える様に相棒が声を出した。
『…A、俺らさ…もう探偵社辞めねぇか?』
その発言に思考は止まり、「え?」と間抜けな声が漏れ出た。
『前にも言ったけどよ、応援呼べなかったって事は俺等信用されてないって事じゃねぇの?そんな奴らと一緒に仕事してもだろ。
…それに、お前戦う度に体壊すじゃん。…確かに俺等一緒に頑張ろうぜ!って誓い合ったけどよ、別にここまでしてやらなくても…な?お前には条野の旦那が居るし、金持ってる親も居るだろ?護ってくれる存在が居るんだから…』
なんとも弱々しい相棒の発言だった。
「心配してくれてるのね?」
揶揄う様に言うと相棒は真面目なトーンで「そうだよ。」と言った。
『俺は…お前に申し訳無いと思ってる。こんな目にあわせて、こんな体にしてしまって。
それに、俺は段々…一緒に過ごしていく内にお前に幸せになって欲しいと思うんだ。だからよ、お前探偵社辞め』
「本当は私、条野さんと戦えて嬉しかった。
やっと肩を並べられた。やっとお荷物じゃ無くなった。
それがとても嬉しかったの。
だから、私は探偵社を絶対に辞めない。」
『…本当に、本当に…ごめん。ごめんな…!』
横浜の夜景は、あの日踊った時みたいに光り輝いていた。
18人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
肉塊(プロフ) - 低鈴さん» 好きになってもらって何か嬉しいです。連載までまた少し待ってください。これから飛ばします (2022年12月11日 20時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
低鈴 - 何かめっちゃすきいぃぃぃ!ってなりました!更新頑張って下さい!応援してます! (2022年12月11日 20時) (レス) id: 8c328be9ea (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 花陽さん» いつも本当にありがとうございます。これからもまた心臓に悪い展開を続けていきますので何卒〜 (2022年7月29日 23時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
花陽(プロフ) - 続編おめでとう御座います、【熱】の血の花嫁編も佳境に入ってきまして、とても楽しく読ませて頂いております。此からも応援してます! (2022年7月29日 23時) (レス) @page1 id: 7fe3a7997e (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 三斗(トリップ願望者)さん» うぃ〜‼️ありがとうございます‼️これからも驚かせていきます! (2022年7月29日 22時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:肉塊 | 作成日時:2022年7月29日 21時