第六十話「エンドロール」 ページ13
気が付けば、私は映画館のフカフカな椅子に座っていた。目の前には大きなスクリーン。其処に映っているのは、自分の出身地、誕生日、好きな物嫌いな物、等のプロフィール。まるで映画のエンドロールの様に流れていた。
「お疲れ様でした花嫁殺しさん。依頼は未達成です。いや〜惜しかったスっね!折角俺が花嫁殺しとしての記憶を奪ったのに、こうして走馬灯で流れちゃうなんて大誤算ッスよ。」
斜め後ろの席から、陽気な男性の声が聞こえた。振り返ると、ポップコーンとコーラを持って、スクリーンを眺める神父の服を着た青年だった。
「此処は、私の記憶の中だろう?何故君が居る?」
「あぁ、それは俺が貴方に異能で植え付けた命令だからッスよ。生身の人間じゃありません。本体は本部の教団に居ます。
…折角花嫁殺しさん有能な方なのに此処で死ぬのやっぱ勿体無いッスよ!どうです?!また頑張りませんか?給料弾むっすよ〜!多分!」
暗い映画館の中で彼の青紫の瞳が光り輝く。その綺麗な瞳に私は心臓を掴まれた気持ちになった。
「…私は」
「おい待て君達。いくらエンドロールが流れているとはいえ、此処は映画館内だぞ?マナーというものを知らないの?」
私の腕が隣の席の誰かに勢い良く引かれた。私は隣の席に座っているであろう聞き覚えのある声の主を見る。
「…ソフィー…?」
「ああ。君の愛しい嫁、ソフィーさ。」
其処に座っていたのは、いつもの丸眼鏡を外したソフィーだった。彼女は睨む様にしてスクリーンを見る。
「というか、君。何処の誰か分からないが、此奴は私の旦那だ!勝手に私の知らない所に旦那を連れて行くのは止めてくれ!浮気だぞ!」
ソフィーの説教に青年は溜息を吐き、席を立った。
「へーへー。お熱いこって。分かりましたよー貴方の旦那さんはもう連れて行きません〜。ずっとイチャついてろぉ〜。」
そう言って、青年は館内を出て行った。
「…何で、お前が居るんだ?」
「何でって…そりゃ私は君の嫁だし。例え君がどんなに辛い目に遭って、記憶を忘れても、私は君の隣に居る。夫婦じゃないか。婚約指輪を渡したのは君だぞ?
それに、映画デートは行ってないからね。」
「…酷い映画だったろ。」
「ああ!酷いとも!君は私が居ないと駄目だな!」
ソフィーは俺のかけていた伊達の丸眼鏡を外し、自分に付ける。
「…今まで眼鏡預かってくれててありがと。ピエール。」
彼女は最後に俺の名前を呼んでくれた。
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肉塊(プロフ) - 低鈴さん» 好きになってもらって何か嬉しいです。連載までまた少し待ってください。これから飛ばします (2022年12月11日 20時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
低鈴 - 何かめっちゃすきいぃぃぃ!ってなりました!更新頑張って下さい!応援してます! (2022年12月11日 20時) (レス) id: 8c328be9ea (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 花陽さん» いつも本当にありがとうございます。これからもまた心臓に悪い展開を続けていきますので何卒〜 (2022年7月29日 23時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
花陽(プロフ) - 続編おめでとう御座います、【熱】の血の花嫁編も佳境に入ってきまして、とても楽しく読ませて頂いております。此からも応援してます! (2022年7月29日 23時) (レス) @page1 id: 7fe3a7997e (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 三斗(トリップ願望者)さん» うぃ〜‼️ありがとうございます‼️これからも驚かせていきます! (2022年7月29日 22時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肉塊 | 作成日時:2022年7月29日 21時