5 【Ms.ハーデス】 ページ5
「……なにかしら」
先程までのいい天気はどこへやら……暴風雨になり、部屋の窓がガタガタと耳障りな音を立てて私の部屋を反響する。これがゆっくり出来ない理由の一つではあるけれど、もうひとつだけ。
「ねえ、どう思う?この感じ、ワンダーランドでも感じたことの無い気持ち悪くて最悪で……」
「あなたは黙るということを知らないの?」
珍しい客人……いや、客トランプ?の彼がずっと天井から上半身だけを出してペラペラと止まらない口で話している……ええ、わかっているでしょうけど、私に対してよ。
「黙ったら持ってかれそうでさ、ボクにとってはあのクソリンゴくらいイヤな感じさ!」
「あらそう……それは大変ね」
「ええ〜なんか他人事じゃない?」
「あなたがどこまで彼のこと嫌いだか知らないからよ……知りたくもないけど」
頬にあるハートが膨らむと、ノックもせずにドアが乱暴に開けられる……そこにはホックさんが居た。
「すまない、取り込み中だったか?」
「……いえ、彼が一方的に話していただけです」
「そうか、それならば2人とも来てくれ」
ウェーブのかかった髪を揺らして、部屋から早歩きで出ていってしまったホックさんの様子がおかしいと察してから、彼と共にホックさんの後を追った。ここだ。と彼女がさした場所はAとスキャターの部屋だった。少し開いたドアの隙間から花弁が溢れている。
「……ここから、嫌な気が出てたんだ」
「確かに、強いわね……ホックさん、朝はどうでした?」
「普通だった。いつものように笑顔でAとスキャターに挨拶をされた」
「とにかく中に入らない?原因を突き止めるのが先でしょ?」
ドアノブに手をかけてゆっくりとドアを開くと、その時に発生した風で花弁がふわりと舞う。外が暗いこともあり、先が見えない。聞こえるのは誰かのすすり泣く声。
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作者名:東雲大我 | 作成日時:2019年5月12日 21時