2 【アップルポイズン】 ページ2
「なんです?その本は」
ドアをノックする音を聞き、ドアを開けば大事そうに本を抱えたAが立っていた。従者のような長いスカートに、清潔なエプロンに白い手袋……今日は高く結った絹のような柔らかい髪、動きやすくするためか踵の低いブーツを履いている。
優しく微笑んだ彼女は、『お時間よろしいですか』と聞いたので首を縦に振って中に入れた。
大事そうに抱えた本は日記帳だった。
客人が来たというのに、何も出さないというのは礼儀に反するので、紅茶と先程作ったりんごのガトーインビジブルを差し出した。
『ありがとうございます』
「紅茶は彼のように美味しくなりませんが……」
『いえ、とても良い香りで……美味しいです』
「さて、ご用件はなんでしょう?」
テーブルに置かれた彼女が持参した日記帳に目をやってから彼女に微笑むと、嘘のつけない優しいレディは持っていたカップを置き、微笑む。
『この日記帳を見ていただきたくて……大変貴重なものだとミスターから伺いまして、それならば手袋をしていた方が良いと……』
いけませんでしたか?と聞いてくる彼女の理由に納得し、日記帳の中身を見ることとした。私も手袋をしているのだから、触れる事を許されると思ったが、Aは私にそれを触れさせようとはせず、手を伸ばせば日記帳を自分の方へと近づける。それでも彼女は笑っていた。
「見せたいと持ってきたのに、なぜ触れさせてくれないのです?」
『触れさせるために持ってきてませんから』
捲るので読んでください。と日記帳を開く。美しい表紙からは想像もつかないほど、おぞましい内容がそこには綴られていた。
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作者名:東雲大我 | 作成日時:2019年5月12日 21時