ハナズオウの日記帳 1 ページ1
ガラスケースの中に閉じ込められた日記帳と、花弁。そのケースから花弁が出ていかないようにと雁字搦めに巻かれたチェーンと、それを手助けするいくつもの南京錠。明らかに【いわくつき】だ。
｢ミ、ミスター……これは？｣
｢さあ？気づいたら私の机の上にあったよ｣
｢ひえ…なんでそんなケロッとしてるんです？｣
恐る恐る質問をするスキャターに対し、言葉が詰まることなく答えていくミスター。私はそれを見て、好きな子をイジメて、反応を見て楽しんでいる幼い男の子。を連想した。
『して、ミスター？』
｢え、何その喋り方……キャラぶれてない？｣
『なんのことでしょう……？それより、』
｢それより、って……いや困るでしょ｣
『何が困るのでしょうか？私は、早く用事を済ませてスキャターとティータイムをしたいのです。困っているのは私です。さあ、何か用ですか？』
ミスターにつめよってそう言うと、逃げ場を失ったミスターは、壁に背を当てたまま、真剣な眼差しで話し始めた。
｢この日記を処分して欲しい｣
『……成程。私達に都合の悪いものでしたか』
｢で、でも……それならミスターが処分した方がよろしいのでは？｣
スキャターが最もらしい事を言うと、ギクッ！という効果音が聞こえた。私とスキャターに対する試練しにては簡単そうに聞こえるこの頼み。恐らく、処分するには面倒なものなのだろう……わたしは二つ返事で承諾した。スキャターは驚きながら本当にいいの？と不安げな顔で私を見た。
『大丈夫よ、スキャター。この日記を処分するのに指定の人数はないから』
一つ一つの南京錠を解いていき、花弁に埋もれた日記帳を手に取る。その時私は誓った。
この日記帳を、誰にも触らせまいと……
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作者名：東雲大我 | 作成日時：2019年5月12日 21時
