はなさない【ジャックハート】 ページ38
ジャックハートさんが目を覚ました。彼の大きな目はまだ光の刺激に慣れず、眩しそうにしながらゆっくりと慣らしていく。完全に目が開くと何かを思い出したかのように素早く体を起こすが、左足を捻挫していたので、その痛みに耐えるために、喉を絞められたような声を漏らす。
｢あ、A……｣
痛みに耐えた後に私を見つけると、笑顔を見せた。私の嫌いな彼の笑顔。私はグラグラと胸の奥から燃える怒りを抑えようとした。だが、これは仲直りをするチャンス。なんせ彼と私しかこの部屋には居ないからだ。なのに、私から出た言葉は……
『……次の日がお休みで良かったですね、これで明日もリクルーティングなんて言ったら、足を引きずりながらゲストの皆さんにお見苦しいところを晒すところでしたね』
ああ、なんという事だ。ますます溝は深まるばかりでは無いか。どうしてこうなってしまうのか。ジャックハートさんが悪い訳では無いのは知っている。私が悪いのだ……私か謝らないから……
｢あははっ、本当だよね……Vが言っていた通りだ、人間の体って脆いね｣
『ええ、本当ですよ……分かっているなら無茶はしないでください！ ここは貴方のいるワンダーランドじゃないんですよ!? 夢の中ならなんでも出来るとお思いでしょうが、ここは現実世界なんです！眠っている間の短い時間に作られた世界じゃないんですよ!!』
口から出たのは説教。謝罪ではなく説教。何もかもをベラベラと口にした。視界がじわりと滲んだが、そんなことも気にしなかった私はジャックハートさんに説教をした。すると、肩をがっしりと掴まれ、そのまま温かいぬくもりが、優しく私を包み込んだ。
｢ごめんね、もういっぱい……Aの気持ちが聞けたよ ごめんね、A｣
耳元で聞こえるジャックハートさんの声。震える声で何度も謝る彼に、また怖がらせてしまった……と反省する。離れようとして彼の体を押す度に、彼の抱きしめる力は強くなる。
｢Aばっかり話してズルい ボクにもお話させて？｣
『では、1回離れて……』
｢それは嫌だ、このままがいい｣
はなさない 2【ジャックハート】→←LとL【Mr.ダルメシア】
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作者名：東雲大我 | 作成日時：2018年10月22日 2時
