Happy Villains Story!!【短編集】 (ページ29)

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ヴェール《大人気ない》ページ29

歌い終えると、そこにはAさんと、さっきまで居なかったマルフィがソファーに座って拍手を送っていました。

｢マルフィ、いつからそこに？｣
｢初めからいましたよ｣
『ええ、ヴェールさんが歌い始めたあたりから』

気づいていたのですか？とマルフィが聞くと、Aさんはそれを肯定し、『独り占めできなかったです』と残念そうな顔をしてからマルフィを睨む。それを気にせずに手鏡で身だしなみを整えるマルフィ。それが終わると、何かを思い出したようにAさんの名前を呼んで話題を変えましたわ。

｢アップルポイズンが君のことを探していたよ、アップルパイが焼けたと言っていたか……｣
『直ぐに向かいますそうだ、ヴェールさんもご一緒に……』

笑顔で差し出されたAさんの手を取ろうとすると、マルフィがそれを制す。それを不思議そうに見つめているAさんの、私に向けて差し出された手は行き場を失って宙を彷徨う。

『あ、あの……』
｢私を誘ってはくれないのかな？｣
『はい？』
｢私がここに居るのに、何故ヴェールだけを誘う!?｣

嘆くように放った言葉に唖然としていると、Aさんが申し訳なさそうにマルフィを誘うと、微笑んで｢当然だ｣と胸を張りましたわ……なんて大人気ないのかしら。

でも貴方、アップルパイ苦手じゃありませんの？