Happy Villains Story!!【短編集】 (ページ27)

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エイトフットのジョー《釣れない》ページ27

Aは【釣れねぇ女】って印象がある。

俺がどんなに嫌味を言っても、へらっと笑って返しやがるし、ひでぇ時はすれ違っても気付かないふりをしてそのままという事だってある。まあでも、必要最低限の会話はするぜ？挨拶とか、リクルーティングの打ち合わせとか、後はアースラ様から届いた契約書の束を持ってくるとか……しかも笑顔で。

そんなAが動揺する単語がある。

スキャター

会話の中に混じらせると、顔のどこかがピクンと跳ねる。まあ、それは過去に色々あったってことなんだけどよ、別にスキャターのことが嫌いってわけじゃない。アイツが嫌いなのは俺だ。俺がスキャターの名前を口にすれば反応する。他のリクルーターが名前を出しても、笑って話を広げたりするのに、俺に関してはピクンと顔のどこか(その時は眉毛だった)が跳ねる。

『スキャターに何かしたら、次はありませんよ？』
｢おー、怖い怖い……｣

両手を上げて｢冗談｣と言えば、また笑顔に戻って話を続ける。必要最低限の話を。

｢そういやお前、ジャックと和解できたのか？｣
『今その話は関係ありませんよね？』

少し食い気味に笑顔で言ったA。出来てねぇな、こりゃ。早く関係戻してもらわねぇと、リクルーティングでジャックが噛んだり、転びそうになったりと普段のヤツからは想像出来ないようなことがミスが見えンだよ……まあ、からかうネタが増えて良いけどな。でも、それが続くってなると飽きるからなぁ……どうにかしてもらいてェもんだ。

｢あのな、ジャックのヤツ最近ミスが多いんだ｣
『そうですか、ではミスターに相談して休暇を頂きましょう』
｢いや、そういう事じゃねぇだろ｣
『もういいですか？そろそろ、リクルーティングが始まりますよ』

コツコツとヒールが床を叩く。遠くなる足音に何も出来ない……いや、体が動かねぇ(・・・・・・)。

マルフィの鏡にかけられた謎の魔力と似たような雰囲気がそこにはあった。