Happy Villains Story!!【短編集】 (ページ15)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:29,401 hit

花【ファージャ】2 ページ15

｢A……大丈夫？｣

いつものエントランス……ではなく自室。スキャターと同居しているホテルの一室(正確には、小さな共同スペースがあり、そこでティータイムや書類整理等を行う)にあるテーブルに伏していた。スキャターの声が聞こえたと同時に、カチャカチャと食器の擦れる音も聞こえた。

｢ミスしたの、気にしてるの？｣
『うん……ミスターの目線が怖かった』

机は私の涙で濡れ、鼻水が詰まって鼻は呼吸困難。スキャターは、私の頭を優しく撫でる。ゆっくりと顔を起こして、熱を持った顔をスキャターに晒した。彼女はそんな私を慰めてくれた。

｢邪魔すんでーーー！｣
『邪魔するなら帰って下さい……』
｢あいよーー……って、帰すな！｣
｢その前にノックして下さい、ファージャさん｣

ファージャさんが現れた。手には、やはり花を持っていたが青かった。私の泣きじゃくった顔を見て｢ひっどい顔｣と嫌な顔をした。顔を洗うために洗面所へ向かおうとすると、ファージャさんが私の前に立ち、花をくるりと回した瞬間、青い花が赤に変わった。

｢うちのマジック、すごい～？｣
『……す、凄いです』
｢もう1回みたい～？｣
『み、見たいです』

そう言うと、ファージャさんは微笑んだ。リクルーティングのように｢やりませーーん！｣と言うのだろうと思っていると、ファージャさんは赤い花をもう一本出した。スキャターと私は、まさかマジックを披露してくれるとは思わなかったので、驚きの声を上げる。

｢い、今の！どうやったんですか!?｣
『も、もう1回！もう1回！』

｢さすがにもう、やりませーーーん！
けどな、この花は涙を見せたり、涙で育てたらアカンで！また青い花になってまうからな……無理に笑顔にならんでもええけど、この花の前くらいは笑ってもらわんと、今よりも綺麗な赤にならんからな！｣

ファージャさんの言葉で更に涙が溢れてしまう。けれど、ファージャさんから頂いた花は変わらず美しい情熱の赤を私の目に映して、今でも私の部屋を照らしていた。