Happy Villains Story!!【短編集】 (ページ13)

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歌【ヴェール】2 ページ13

｢フロロー様で私(わたくし)をつるなんて、酷いですわ｣

今日予定された全てのリクルーティングが終わり、ホテルに戻る。珍しく誰も居ない談話室に入って資料整理とリクルーティングの報告書の作成作業を進めていると、ベルの音が頭上でしたので、そちらに目線をやると頬を膨らませたヴェールさんが立っていた。

『あはは……すみません、いきなり笑顔で迫られたので……』

ストン、と隣に座ったヴェールさん。何をするかと構えていると、私の耳元でベルを鳴らし始めた。音は美しいのに今は、耳障りな鬱陶しい音に感じてしまった。

『ヴェールさん、ストップ！ストップ！』

耳を押さえてそう訴えると、ピタリと音が止まる。チラリとヴェールさんを見ると、またベルを鳴らし始めた。それの繰り返しが続いて『やめてください!!』とヴェールさんを突っぱねてから怒鳴ってしまった。

『何なんですか?!いきなりベルを鳴らして！』
｢……｣
『うるさいですよ！そんなに近くで鳴らさなくても、聞こえてますから！それに……あ、』
｢……｣

口を手で覆って、言いすぎたと反省するとヴェールさんが近寄って潤んだ目で私の目を見つめた。泣かせてしまったと罪悪感が押し寄せる。

｢リクルーティング中、元気がなかったので……終わったら元気づけようとベルを鳴らしてみたのですが、駄目でしたわね……｣

元気がなかったって……ゲストの方も気付いてたのかな。もしかして、ヴェールさんが笑顔でこっちに来たのって……ヴェールさんがとった行動に納得してから、お願いをした。

『じゃあ、明日も頑張れるように……歌っていただけますか？』

ヴェールさんはその言葉を待っていたかのように微笑んで立ち上がってから、カーペットまで移動し、その上で歌い始めた。談話室に響く歌声に酔いしれていると、いつの間にかマルフィさんが居たのは触れないでおこう。