1 【スキャター】 ページ11
彼女の文字が一枚の紙に埋め尽くされている。
日記なのだから当たり前なのだろうと、最初は思った。けれど、この1枚が何枚も重なってひとつの束になり、その束が棚に整列されているとなると、それはまた別なのではないでしょうか。そんな空間で1冊の日記を閉じた私。それを元の場所に戻して隣にあった日記を取り出す。適当に何冊か取り出した日記帳の中途半端なページを開いて、日付を順当に見ないのが面白いとAが言っていた。
『好きに見て良いよ』と彼女が面白い部屋と名付けた部屋には本棚と記すための机。ペンとまだ何も書かれていない新品の日記帳、そして写真立て。それらを優しく照らす暖色のランプ。そんな中で彼女の日記を読んでいる。
『私ね、日記を書くことにしたの』
｢日記を？｣
『そう、これからヴィランズになる為の日常が始まるのよ？ヴィランズになったら、こんなこともあったな……って懐かしみたいじゃない！』
スキャターと一緒にね！と微笑む彼女は、物語に出てくる心優しい少女のようだった。しかし、彼女には私よりもヴィランズになれる素質があった。私よりも一歩先に進み、他の皆さんからも認められて正直羨ましかった。けれど、私は1度だけAを追い抜いた事がある。それが免許皆伝したこと。
『すごいじゃない！私もこうしちゃいられないわね……すぐにスキャターに追いつくから、待ってて！』
｢でも、秘密よ？｣
『あら、リクルーターの方に、ミスターに言わなくていいの？』
｢Aは特別なの！それにね……｣
私は耳打ちをした。少し擽ったそうにしているAは話し終えた瞬間に、口角を少し上げて『悪い子だ』と私の頬を指で突っついた。
｢当たり前でしょう？ヴィランズを目指してるんだから｣
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作者名：東雲大我 | 作成日時：2018年10月22日 2時
