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「なりたい。彼女にして。」
涙声でか細く紡がれた私の声。
言い終えた瞬間、ぎゅうっときつく風磨の腕で抱きしめられた。
「バカ。もうそうなんだっつの。あの日からずっと、貴女って俺の彼女なんだけど。」
「えぇ?」
「ほんと、バカ…。」
耳元で「バカ、アホ、鈍感」って小学生みたいな悪口。
でもその声が凄く甘くて、言葉はそんななのに甘やかされているみたいで。
私、ずっと風磨の彼女?
そっか。
そうだったんだ。
リリナちゃん、ごめんね。
でも譲れないんだ。
風磨は譲れないの。
ごめんね。
「えへへ。嬉しい。」
「・・・もう。狡いのどっちだよ。」
「ん?」
体を少しだけ離されて視線を交えた。
「怒る気なくなる。その顔は狡いわ。」
その顔ってどの顔?
「言いたくないんだけど…。察するの無理みたいだから補足しておく。」
「なぁに?」
「俺、興味もない子を自分のテリトリーに連れ込まないからね。」
「うん?」
「確かに如月は俺の家に来たことあるし中に入れたこともあるよ。でもそれは同じゼミのメンツがいるときだけだから。如月に関わらず女1人だけを家に入れるとかないから。」
「だって私は・・・」
「察してって言うのやめるとは言ったけど、少しは察しろよ。」
風磨が呆れたように、でも優しく困ったように笑うから切なくなった。
最初から風磨はずっと私に優しい。
なんで信じられなかったんだろう。
本当に、バカ。
「ごめんなさい。」
「・・・いや、まぁ根本は俺のせい、だけど。悪かった。」
「え?なんで?」
なんで風磨が謝るの?
「俺が、その・・・」
合わせていた視線を反らして、言いにくそうに言葉を詰まらせる。
歯切れが悪いのは珍しいよね。
「風磨?」
呼びかけたら風磨の指先が私の頬を撫でた。
優しくそっと、長い指が頬をなぞる。
まるで、愛おしむみたいに。
もう一度視線が交わって、風磨が真剣な表情をするからこちらも緊張する。
綺麗な瞳の色が魅力的でまるで捕らえられたように反らせなくなる。
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和奏(プロフ) - キュン死にしそうやばい (2022年3月31日 3時) (レス) @page50 id: eab8bc5332 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - イチさん» 読んでいただけて嬉しいです!ありがとうございます!風磨くんと彼女さんのやりとりがすごく好きで何度も読ませていただいてます。卒論頑張れ風磨くん!(笑) (2017年10月23日 22時) (レス) id: 85310a9d6c (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - あまーいふうまくんに、めちゃくちゃきゅんとします!続き楽しみに待ってます。 (2017年10月23日 0時) (レス) id: 60b6eaf521 (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - みちさん» みちさん!読んで下さってありがとうございます!!とても嬉しいです(*'ω'*)めっちゃ更新楽しみにしてます。毎度速攻お邪魔してます(笑)ペース早くて尊敬です。 (2017年10月22日 22時) (レス) id: d3ad2b2239 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - こんばんは。風磨くんの言葉と行動が素敵で…一気に読ませていただきました。イチさんの書かれる文章も大好きです。これからも楽しみに読ませていただきます。 (2017年10月14日 20時) (レス) id: 85310a9d6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチ | 作成日時:2017年6月25日 7時