星の雨２

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紫side


激しい眩暈がして、立ってるのがやっとやった。


目の前で、好きな子が、ライバルにキスされてるねん。


耐えられるわけない。


直視出来ずに、携帯に視線を落とす。


メールの一覧には、


淳太社長からと、
テレビ局のADさんから数件。


それから、晶馬の名前も。


内容なんか、入ってくるわけもないのに、開いてみる。


早く、カット、かかってくれ。


祈るような思いで、やり過ごす。


多分、時間にしたら30秒程度のこと。


俺には、数時間に感じた。


待ち望んでたカットはかかって、
やっと顔を上げると、

スタッフから渡された花束を抱える望の笑顔が視界に飛び込んできた。


愛らしい姿は、天使そのものや。


望と流星が何か話してる。


望は強い意志のある瞳で流星を見つめてて、
流星の方が珍しく真っ赤っかや。


いつもは望が流星の飄々とした態度に翻弄されてんのに。

今は反対。


「・・・」


流星が何か呟いたけど、聞き取られへんかった。

と思た時には。


流星の長い腕が伸びて、
望のこと花束ごと、抱きしめてん。


望の驚いた顔。

目を見開いて、口をパクパクしてる。


「りゅうせ！やめて！みんな見てるから！」


「無理、我慢出来へん。
やっと望を手に入れたのに」


二人のやりとりに、現場が沸いた。


さっと視線を逸らしても。


「うわあっ！現実でも付き合っちゃうんだ！
やっぱりね！」


「お似合い過ぎて誰も文句なし！」


スタッフの言葉に、胸を抉られる。


逃げ出そうとして、数歩歩きかけた時。


目の奥に眩しい閃光が走って、
思わず、ふらついて、壁にもたれかかる。


脳裏に浮かぶ、白い便箋と青く滲んだ、万年筆の文字。


『もし俺に何かあったら、妻と息子のことを頼む』


極寒の満州で書いた手紙の宛先は、藤井流星。


俺らは、結ばれへん運命なんや、過去も現在も。


望が俺を覚えてへんのが、その証拠のように感じる。


「濱ちゃんっ！！大丈夫っ！？」


望が駆け寄って来て、俺の肩に触れた。


やりきられへん思いに、カッとなってもうて。


「触んなや」


きつい言い方、してしもた。


望、驚いてるやろな。

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