星の雨２

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慌てて、さっき、駅弁屋さんでおにぎり買うて来てん。


「濱ちゃん、おにぎり食べる？」


勇気を出して、差し出してみる。


「ええん？ありがとうな」


濱ちゃんの日に焼けた指に、俺の指が触れた。


その瞬間に。


記憶の欠片たちが、津波のように押し寄せてきた。


おんなじことが前にもあった。


けど、俺の経験やなくて。


前世の俺、望美として。


ガタンゴトン揺れる列車。


隣の席、
俺が差し出したおにぎりを頬張ってるのは・・・


それは。


逆光が眩しくて、その笑顔が誰か分からへん。


けど、大好きで仕方ない人や。


「濱ちゃんなん？」


「え？」


「俺の前世の運命の人。
ほんまは濱ちゃんやったん？」


顔を上げて、濱ちゃんを見ると、
困った顔して、笑うてる。


この、くしゃくしゃの優し過ぎる笑顔が好きやねん。


「教えて欲しいねん。
濱ちゃんも、前世の記憶があるねやろ？」


「・・・うん」


濱ちゃんがうなづく。


「教えてや、お願い。
俺が忘れてることがあるねやろ？」


前世は関係ない。

欲しいのは、今の濱ちゃんの気持ちやのに。


けど、前世でだけでも愛されてたい。


「・・・望を困らせる気がして言われへんかった」


「ん・・・」


「俺と望は、前世で夫婦やった。
軍人やった俺は日露戦争に出征して。
満州で戦死して、死に別れした。
その後、望は流星と再婚したらしい」


「じゃあ、あの男の子は、
泰崇は・・・」


「俺と望の子供や。
俺の名前から一文字取って名付けたいって、望が言うて。
俺が名付けた」


「・・・そう。
濱ちゃんはいつ思い出したん？
現世で俺と出会ってから？」


「もっと、ずっと前。
ちっちゃい頃から、
記憶のかけらみたいなもんは、
たまに見ててんけどな。
自衛隊に入って数年経った頃に、
東北で震災あって。
その時に急に全部クリアに思い出してん。
それからしばらくして、
たまたまテレビで見たオーディション番組で望を見つけた。
すぐに運命の人やって気付いた。
それで、自衛官辞めてマネージャーなってん。
呆れるやろ？」


「濱ちゃん、それは、ほんま？」

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