I trust you. ��

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しかしなるほど、どうりで服装がデートっぽいそれなワケだ。普段より淡めの色で纏め上げ、女子らしいふんわりとした雰囲気ながら、夏にあった爽やかな印象を与える外見。
見慣れないスカートが異性であることを主張しているようで変に意識してしまう。
そのせいで、無意味に心臓は早鐘を打つわ、目のやり場に困るわでいっぱいいっぱいだったのだ。

「あの、先輩？聞いてますか…？」
「え！？…うん、聞いてる聞いてる！」
「じゃあ、良いってことですよね？…剛さん」

聞いてたなんて真っ赤な嘘。実質デートみたいなものだと浮かれていた俺に、そんな余裕はない。それがまさか、こんなことになるとは。
Aは照れ笑いを隠すように俯き、掠れた甘い声で俺の名前を呼んだ。

「いや、呼び方……」
「付き合ってる体なのに、先輩呼びは変だから名前で呼びますねって言ったじゃないですか…。やっぱり聞いてない〜！」

もう、と頬を膨らませて怒っているが、笑顔が浮かんでいるところを見ると冗談なのだろう。演技だと分かっていても、顔のニヤケが止まらない。名前を呼ばれただけでこの破壊力なのは、なかなか恐ろしいものがある。

このまま喋っているだけでは事が進展しない、と進兄さんから無線で叱られ、Aと街中を歩くことに。外に出たのはいいものの、休日の昼間ということもあり、周りにいるのはカップルばかり。
対してこっちは急ピッチで仕上げた偽カップル。距離感が掴めずに、微妙に開いた二人の間が全てを物語っている。これじゃあ騙せるものも騙せない、と周囲を観察したが、手を繋いでいたり抱きついていたり、終いにはキスまでしている奴らがいた。
いやいやいや、これは無理だろ、と心の中でエスケープする。付き合いたての初々しいカップルって事で突き通そう、だとか誰に向けるでもない言い訳を並べたて、何とか気持ちを鎮めた。
さっきから一言も話さないAが心配で、視線を向けた瞬間、突然引かれた腕。そこに自分のものではない腕が絡まり、隣へと引き寄せられる。

「えっ」
「…これくらいなら、付き合ってなくてもセーフ、ですよね」

いきなり腕とか組むなよ、心臓に悪い、と悪態付くこともできず。男慣れしてないんだろうな、と見て分かるくらい真っ赤に染めた頰のせいで、そんな気は失せていった。
初めこそ、とんでもない試練を姉ちゃんから与えられたと絶望したが、こういう美味しい展開があるならまあ良いかと思ってしまう辺り、俺は随分と現金な気がする。

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